長期投資をするにあたっては、ファンドの設立を検討されてはいかがでしょうか。目的は、投資資金と家計資産との分離、生涯キャッシュフローの算出にあります。
もちろん投資資金が、どのように増えたか減ったかは最大関心事ですが、売らないかぎり幻の資産額に一喜一憂しても仕方ありません。
大切なことは、資金の分離です。これがリスク管理のうえでもっとも大切なのです。よく「最悪に備えて投資しろ」なんてことを言う人がいますが、これは投資をするなと同義語です。それなら「なんで金を増やすの?」と、いってやりたい。
投資資金と生活資金とを分離することが、最悪に備えて投資する最大の利点になります。最悪の事態が起こっても失うのは投資資金で、生活資金に影響がなければ、いずれ立ち直りのきっかけはつかめます。
もうひとつのメリットは、ファンドと投資資金との金銭のやり取り、つまりキャッシュフローが明確になるということです。
今100万円の資金でファンドを立ち上げたとしましょう。このときのファンドの資金は、あなたからの借入金だけです。つまりマイナス100万円です。この資金で株を買い、その株が200万円に値上がりし、そのうち100万円を売却し、あなたに返済したとします。
ファンドの資産は、100万円で変わりませんが、キャッシュフローはゼロになります。つまり、ファンドの資金はただになったことになります。その後では、大きくリスクをとっても、ただだと思えば気が楽です。
生活資産と分離し、キャッシュフローを明確する、これがファンドを作る最大のメリットです。
私は、「富士山初日の出」という名のファンドを運営しています。ロゴマークにしている「富士山初日の出」は、山好きの証券会社の方の作品で、頂上からのご来光で有名な身延山の奥の院、七面山山頂からの初日の出を撮影したものです。彼はこの1枚の写真を取るために、1週間山頂に籠もったそうです。
そんなありがたいロゴのせいか、私のファンドは、何度かの資産の半減を繰り返しながらも生き続けています。生涯のキャッシュフローはとっくにプラス圏で、「私の投下資金は回収済み」と、ひそかに思っているのですが……。
「それじゃ、大儲けで、大変結構な話だな!」と、突然天からの声。
「それがそうでもないんですよ。何しろ資産は、バブルをピークに減り続けているので」
「……」