yuhsanさんのブログ
電子書籍であなたも作家になりませんか
作家への道
皆さん、退職後の余暇をいかがお過ごしですか。ゴルフ、海外旅行、囲碁、マージャン……。
私も、登山、海外旅行、ガイドと一通りやりましたが、自分を表現しようという欲求から、「物書き」が、最後に残された趣味になりました。
1冊でも本を出版していれば作家といえるなら、私もその資格は十分あります。20年ほど前に山の本を出版し、1万部近く売れました。今でも私の名前で、ネット検索を掛ければ、著者として登録されていますし、たまにあった友達とは、本の話で繋がります。
ただ、「お前の職業は?」と聞かれたとき、胸を張って「作家です」と答えるには、もう1冊くらい本を出す必要がありそうです。書くのも作るのもどうにかできましたが、どうやって世に出すかです。
昨年、私の8歳になる孫娘に、
「ジージが今度本を出したよ」と、自慢げに話しかけたのですが。
「見せてよ、どこに?」
「ここだよ」と、コンピューターを指し示すと、不満げな表情を見せるのです。
そこで翌日、電子書籍リーダー「コボ」を購入し、そこに作品をダウンロードして孫娘にプレゼントしたら、どうやら納得してくれました。中身が勝負といっても、やはり形が見えないと、本として認識してくれないようです。
紙の本は自費出版?
本は「紙で」ということに拘るならば、作家としての選択肢は、作品を出版社に根気よく送りつけ、「……賞」作家として世に出るか、あるいは出版社に作品が売れるという根拠を示して、説得するしか方法がありません。
昔から作家になるには、出版社が作家を発掘し、リスクを取って本を作り、それを本屋さんで販売する方法が一番でした。出版社が音頭を取り、作家は出版社次第の受身です。ところが、昨今の出版不況で、出版社もリスクを取らなくなり、よほどの作家か話題性のある作品しか本にしません。
大学の教授などでも本を作る場合に、売れ行きの保証がないと出版してくれないといいます。大学教授や作家にとっては、出版物がステータスになるところから、やむをえず、リスクを自分で取り、自費出版に近いような形で本を出しているようです。
制作から販売まですべて自分でやれば、従来出版社が手にしていた収益が自分のものになるはずですが……。その前に、ざっと収支計算をしてみましょう。
最近、信頼の置ける出版社では、自費出版のさまざまなリスクとともに、見積もり費用も開示していますので、出版の判断材料にはなります。
自費出版の費用は、一概にはいえないようですが、販売する際の最低条件となる本屋さんへ委託販売ができる条件で、200ページの本を300冊作るコストは、70~80万円、1冊当たり2,500円ほどです。
この出版社では、本屋さんでの売上げの50%を製作者に還元しているようなので、作家がコストを回収しようと思えば5,000円の売価を付け、しかも全量販売しなくてはなりません。現在では出版物の半分は返品処分されるといいますので、自費出版本は仮に本屋さんの店頭に並べられても、そのほとんどが返品されると考えておいたほうがいいようです。
ミリオンセラーの本が続出した時代では、作家は10%程度の印税だけで1億近い収入となり、新しい人世を踏み出した人も多かったのです。でも時代が変わりました。情報が氾濫し、情報のコストも劇的に変化してきました。いまやネットを使えば、たいていの情報は無料で入手できます。自費出版し無料で友人などに送りつけても、見てくれる保証はありません。
情報コストが安い時代の発信手段
早い話が、株に関する情報は、「みんかぶ」で、ほとんど入手できます。日記を開けば、買い時、売り時の判断、銘柄解説から投資法まで、親切丁寧に教えてくれます。金を出しわざわざ本屋さんに行かなくても、必要な情報が入手できます。
本屋さんの店頭で並べられている本も、「100万円の資金を1年間で1億にした主婦の話」とか、「アベノミクスであなたの財産を失うリスク」といった内容が目に付きます。再現性という点で1億円を稼げるとも思えませんし、投資に伴うリスクをいうのなら株を買わないほうがましです。要は、極端な現象や理論でないと本は売れないということです。
解っていても、可能性はほとんどない原稿を出版社に持ち込み、2作目の夢を追い続けている人もいますが……。
この間、出版文化にもITの波が押し寄せてきました。携帯電話がスマホに変わり、更にタブレット型が安価になって、カラー、動き、音声を備えた汎用機で、マンガを読んだり動画を楽しんだりする書籍文化がわが国にも定着してきました。
情報発信手段としては、ホームページがあります。これだと費用は掛からない上に、広く読んでもらえそうです。私も手間暇をかけて運用を続けています。SNSに投稿し考え方に共鳴される人との交流もしています。ホームページにしろ、SNSでも、電子化された情報共有手段には違いませんが、本という概念には当たりません。本というからには、持ち運びができ所有権が主張できる「もの」でなくてはなりません。
電子書籍時代の到来
「電子書籍であなたも作家になりませんか」という広告も目にするようになりました。縦書きの文芸書に適した白黒の電子書籍専用機も、昨年あたりから8千円を切る価格で売り出されて「いよいよ電子書籍時代の到来」、あなたの作品を市場で販売し、作家になれる時代になったのでしょうか……。
専用機にしろ、汎用機にしろ、読む立場からすると、電子書籍は紙の本にない利点が多く、一度手にしたら電子書籍リーダーは手放せない人もいるようです。でも、電子書籍って何でしょうか?書籍リーダーはどれがいいのでしょうか?
パソコンにもウインドウズとアップルがあるように、電子書籍にも土台となる仕組みの違いによって、ページ固定型と変動型の2種類に分かれます。
ページ固定型のプラットフォームは、「PDF」形式で、ワードで作った様式に近く比較的簡単にできます。ページ変動型は「EPUB」形式で、文字サイズによって1ページに収まる文字数が変わり、ホームページに近い感じとなります。縦書き、ルビ、縦中横といった日本の文芸書に適し、制作にはある程度の技術が必要です。
学校の先生が、生徒に向かって、
「今日の授業は、教科書の10ページの3行目からですよ!」といっても、生徒たちにとって、文字サイズによってページが変動するEPUBでは、皆が同じところに目が揃うかどうかは分かりません。数字で表すページがないため、目次の見出しにタッチしてページを開きます。
プラットフォームとリーダーの組み合わせ
作りやすさと、作者のイメージが反映するという点で、アニメ、写真、グラフなどを多用する書籍は、PDFで制作され、カラーで変化対応に優れているスマホ、タブレットなどのリーダーで見られています。
縦書きの文芸書や雑誌に近いような書籍には、EPUBが向いているとされ、電池の持ちや目が疲れないといった点から、白黒のリーダーで読む人が多くなっているようです。
電子出版の収益性はどうでしょうか。制作費も販売経費も在庫費用も、紙に比べれば圧倒的に安くなるはずですから、販売価格の引き下げや作家の取り分を上げることは容易です。でも売ることの難しさは紙以上です。
作品をワードで立ち上げ、電子書籍を自分の手で完成させたとしても、販売は出版社の本棚に並べて売ってもらうことには変わりありません。ただ、この場合の出版社は、紙の本の出版社ではなく、本屋さんに近いと考えたほうがいいようです。このため、電子書籍出版社の中には、紙の本の場合、「特定商取引に基づき」表記される出版社の氏名が、電子書籍では作者の名前となるところがあり、作者の本名が公開されることを嫌って、無料とする作家もあるようです。
電子書籍出版の場合のコストは、作品を展示してもらうだけならば無料で、作品が売れた場合に売り上げから10~30%の手数料として差し引かれます。売り上げがなければ、コストは掛かりませんが、収支の計算も無意味です。
先ほどの自費出版を手がけている会社では、電子書籍の制作販売もやっているようで、この場合の費用は、PDFで60,000円、EPUBで100,000円、販売価格の40%が還元されるとあります。この出版社では大手の電子書籍出版社の販売ルートに乗せることをうたっていますので、もし可能ならば、次にあげる最後の難関はクリアされることになりますが……。
電子書籍のプラットフォームは、先にあげたPDFと、EPUBですが、これを見る書籍リーダーは、パソコンからスマホ、タブレットと多様化しています。PDFはマンガ、写真、グラフなどのレイアウト固定型が多いため、ネクサス7やI-PADminiなどの汎用機で見る人が増えているようです。画面の動きが早く、手先でページをめくったり、文字の拡大ができるので、画面の小さいのをある程度補うこともできます。
一方の白黒専用機は、紙の本の感覚で読めますので、目が疲れず電池の持ちもいいという利点があります。最近では液晶画面の見すぎによるブルーライト障害が問題になっていますが、白黒の専用機にはこういったことは起きません。動きのない小説、報告書などの閲覧には、白黒の専用機のほうが優れています。
私は、作品の販売促進として、白黒の専用機「コボ」を友達に配り、感想を聞いたことがあります。電子書籍出版社の作品をパソコンにダウンロードし、書籍リーダーに取り込み、閲覧するまでの手順も一緒に送ったのですが。手順が複雑で面倒だという意見が多く、中にはコンピューターの使い方が分からないというのまでいるのです。肝心の本の中身については触れられず、入り口のところで留まってしまいました。IT革命の波は、われわれの世代には届いていないようです。
電子書籍時代でもプロになるには至難の業
作品を書き上げ、苦労してEPUBで電子書籍化すれば、形の上では本ができあがったことになります。企画から原稿作り、写真、グラフ、表紙の制作、レイアウト、校正までを全部自分で仕上げれば、コストはかかりません。ただ、「もの」ではないため、大手の出版社の販売ルートに乗せ、閲覧者の持っている書籍リーダーに取り込み読まれないと本にはなりません。
出版社は多くありますが、大手の出版社で個人制作の電子書籍を自社のストアで販売してくれるのは、目下のところキンドルの電子書籍リーダーを売っているアマゾンだけです。売れた場合の作家の取り分は70%ですが、他社で出版している作品は出版できないことになっています。
アマゾンの書籍販売ストアに取り込まれた作品は、出版社の版権、作家の著作権の保護のため、プラットフォームに手を加え完全な形でのPDF、EPUB形式ではありません。これにより、ある電子書籍販売社で購入した書籍は、指定した書籍リーダー以外では読むことはできませんが、「キンドル」も「コボ」も、購入者が同一であれば、ネクサス7やI-PADminiなどの汎用タブレットで見れるようにしています。
作家になる道は険しいのですが、紙の本よりは低コストで出版社の販売ルートに乗せてもらえることは確かです。そのためお気軽出版が容易になります。ページ数が少なくても、未完成でも、古いものでも、とりあえず出版し、後で修正し、完成させてゆくことができます。紙の本ではこうは行きません。
作品の内容や電子書籍にする技術で相当の自信があっても、最後は見る人の評価で本と作家の価値が決まります。最後は売れて何ぼの世界です。それでも多くの人に見てもらえるという点では、紙の自費出版本よりは挑戦しがいがあります。著作権はどうか、回し読みのリスクはどうかなど、電子書籍にはまだ不安も残ります。でも、見てもらうことを第一に考えている町の作家には、そんなことはどうでもいい話です。
作品を電子書籍にして販売を考えておられる方に
何のために本を出版するかを考えるのが第一です。売れることより読んでもらうことに重点を置くならば、まず大手の出版社のストアに作品を置いてもらうことです。PDF、EPUB形式であれば、どの出版社からでも本は出せます。
次に、どの書籍リーダーで読んでもらうのが一番適しているかを考えます。写真やグラフ表などを多用する作品ならば、PDFで汎用機で見てもらうように設計します。PDFであれば、電子化に当たってはさほどの技術は要りません。多くの出版社はこの方式での電子化を薦めています。
縦書きの小説、自伝などでは、文字のサイズが選べるEPUB版を、動きのない白黒の専用機で見るほうが目も疲れません。EPUB作成に当たっては、ある程度の知識が必要な上に、まだこれといった参考書もありません。横書き文書では、「SIGIL」という編集ソフトが無料で使えますが、縦書きには対応していません。私もEPUBで縦書き作品に仕上げるのに2年近くかかっています。EPUBにする場合には、ワードで作成した作品のイメージと変わってきますので、ページごとの校正が絶対必要になります。
私は、EPUB版を作成するなら、手間ひまを考えると10万円払っても自費出版社に依頼するほうを勧めます。この場合でも、信用の置ける会社に制作を依頼しないと、後で不都合が発見されても訂正が効かず、結局安物買いの銭失いになります。どんな場合でも、ある程度の技術を身に付け、出版後の編集を自分でやれるようにしないと、電子書籍の利点を生かすことができません。
次は出版社ですが、ともかく大手の出版社で作品を本棚に置いてれているところに、出品します。この場合、他社にも出品できるかを確認することが大切です。最大手のアマゾンでは他社販売を認めていません。
大手で出品できても、売れるかどうかは販売促進次第です。中身が悪いのではありません。読者は関心がなければ、ただでも読んでくれません。
それでも、電子書籍本を数冊出版していれば、作家と呼ばれるのでしょうか?
yuhsan 様
はじめまして、とっても詳しくアップしていただいて興味深く読ませていただきました。ありがとうございました。
出版には自分の生きた証しとしての夢があり、関心がありました。
もっぱら短歌を作っていますので、ライフワークとしてやってみようかなと思いはじめました。
dahltansさん
おはようございます。
最後までご覧になっていただいて、まことにありがとうございます。
おっしゃるように、出版には自分の生きた証が記されています。
財産や名誉を残すのも、そのひとつかもしれませんが、私は作品にしようと……。
ご立派な短歌を作って、それを作品としてぜひ生涯の記念碑とされますよう。