世界各国の法人実効税率 → http://ecodb.net/ranking/corporation_tax.html
*(上記資料は昨年末時点のデ一タですが僅かに訂正箇所があります)
アメリカ39.13→40.75 日本36.99→35.64 ドイツ30.18→29.55
因みにアメリカの法人税は三階建て(連邦法人税35%+州法人税+市法人税)になっており
州や市によって税率が異なります。
例えばニューヨーク市の法人実効税率は45.67%、ネバダ州は連邦法人税のみで35%です。
また日本で産業の空洞化が進んだ原因としては円高が長期に及んだということのほかに
世界各国の法人税率の比較で日本はアメリカに次いで
世界第2位(所得800万円以下の中小企業は18%)という高い位置にあることが指摘されています。
しかし一方で法人税率を下げても空洞化は止まらないという意見もあります。
過去に東京都が実施したアンケート調査
「企業が生産拠点や営業拠点を海外に置く理由」(複数回答可)の結果で上位を占めたのは
①グローバル化推進の良い機会 ②安い賃金 ③豊富な労働力 の3項目で
法人実効税率を理由に挙げた企業は僅か3%しかありませんでした。
つまり法人税率の高いことが
逆に企業のグローバル化を推進したという何とも皮肉な結果になったという訳です。
さらに内閣府が行ったアンケート調査によれば
海外移転の最大の理由は進出先の需要拡大が1位を占め
次いで労働コストが低い(賃金、優遇税制など)
顧客ニーズへの迅速且つ的確な対応が可能という順で
こちらも法人税には殆ど触れられていません。
恐らく法人実効税率を10%下げたとしても東南アジア諸国には遠く及ばないのが現状であり
そんなことに期待するよりさっさと海外へ出て行く方が得策だとういう判断だと思います。
<参考>
法人実効税率が低い国は東南アジアに多く、とシンガポールが事実上最も低く3%
(表向きは17%ですが、海外企業の誘致や海外マネーの預金に対して手厚い優遇措置があります)
次いでタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンが概ね5%の水準です。
因みに中国は20%でやや高めですが、市場が桁外れに大きいことが最大の魅力です。
そこで日本政府は雇用の促進と空洞化に歯止めをかける目的で
雇用促進税制(年間を通じ一定人数雇用を増やすと減税するというもの)を採用して来ました。
しかしこれでは雇用が増えても一人当たりの賃金が上がるどころか
中には下がるケースが発生し問題の解決には至っていないのが実状です。
そこで今年新たに取り上げられたのが所得拡大促進税制なるものです。
詳細は経済産業省HPで →
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.htm
しかし結果的には雇用促進と賃金引き上げのために国民の税金を投入するのと同じことです。
つまり目先が変わっただけで根本的な景気対策や空洞化対策であるとは言えません。
ところで現在日本の企業で法人税を安定的に支払っている企業はおよそ20%しかなく
曲がりなりにも支払っている(赤字と黒字を繰り返している企業など)企業を合わせても
全体の30%しかないと言われています。(上場企業は約80%が支払っています)
ですからその30%に焦点を当てて議論しても多寡が知れているというのが麻生発言であり
減税反対派の考えだと思います。
特に輸出を中心とした日本の製造業の多くは近年すっかり国際競争力を失い
利益が出ても将来への不安から新規雇用や昇給は極力凍結し
せっせと内部留保を続けて今やその総額たるや250兆円に達しています。(上位30社で78兆円)
ですからこの様な体質に陥っている日本企業に設備投資を求める以上ためには
減税ではなく成長戦略の具体的なシナリオが必要だと思います。
さらにこの先新たにTPP参加問題が待ち受けています。
ご存知の様に参加国の顔ぶれをみると日本より経済後進国がズラリと並んでいます。
言い換えると貨幣価値が低い国が多い訳ですから、関税が撤廃されれば
日本製品は価格競争に完敗し、再び空洞化の進む恐れが出て来ます。
つまり法人税減税とTPP参加は矛盾した政策ではないかというのが私の考えです。