前回は主に食料自給率の低下と職の安全確保について書かせて頂きましたが
今回は農作物を中心とした関税撤廃と消費者の負担につて考えてみたいと思います。
ご存知の様にコメにかかる関税は778%というとんでもない税率です。
無論コメ以外にも小豆(403%)、バター(360%)、砂糖(328%)小麦(252%)など
主に農産物や畜産物、水産加工品なども関税撤廃により大きな打撃を受けることになりそうです。
さらにTPPの規定は物品だけでなく各種サービスや制度に関する規定もあり
これらを全て容認してしまえば日本は事実上米国の経済植民地と化す恐れさえあります。
(資料①:財務省貿易統計、実行関税率表2013)→ 品目別の税率
http://www.customs.go.jp/tariff/2013_1/
(資料②:TPPに於ける農林水産物への影響各種試算)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/dai5/keisan.pdf
(資料③:TPPの留意点、2011.外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp02_03.pdf
ところで万一コメの関税が撤廃されると安価な外国米がお茶の間に届くことになります。
例えばカリフルニア産のコシヒカリは1kg60円(通販の場合1kg52円+税で販売しています)
つまり10kg包装が520円~600円で手に入ります。
しかも味は国産の安いコメより余程美味しいとなかなかの評判です。
これを素直に受け止めれば家計には大変有り難い話ですが、コメ農家にとっては死活問題です。
そこで日本政府はコメ農家に補助金を支払うことになるのですが
仮に生産コストと輸入米の差額を全額補償すれば
その総額は年間でmax1.6兆円に及びます。(但し輸入米のコストは最安値で見積もっています)
◇1俵(60kg)当たりの生産コスト13,700円
年間の国内生産量およそ900万トン、輸入米価格を60kg3,000円で計算すると
(13,700円-3,000円)×900万トン=178.33円/kg×9,000,000,000kg=1.6兆円
実際に輸入米のコストはもう少し高くなると思いますが
何れにしてもコメ農家に支払われる補助金が税金であることに変わりはありません。
つまりカリフォルニア産コシヒカリが10kg600円で買えたとしても
巨額の税金がコメ農家に支払われると考えれば果たして安い買い物といえるでしょうか。
ということで、その検証をしてみます。(但し輸入米単価を1kg60円とした場合のモデルです)
①日本人一人当たりの年間コメ消費量 = 約59kg(年々減少しています)
②所得税納税者人口 = 約6100万人(全人口の48%)
カリフォルニア産コシヒカリ(1kg60円)を一人当たり年間60kg消費した場合
コメ代金は60円×60kg=3,600円
コメ農家に対する補助金を1.6兆円(max)と考えた時、所得税納税者数で割ると
1.6兆円÷6100万人=26,230円(納税者一人当たりの年間負担額)
国民一人当たりに直すと1.6兆円÷1億2800万人=12,500円という計算になります。
これに実際支払うコメ代金3,600円を加えると
実質的なコメ代金は国民一人当たり年間およそ16,100円となる訳です。
勿論輸入米の価格が上がればコメ農家への所得負担額は減額出来るため税負担も減少しますが
輸入米の市場価格も上がるので消費者の実質負担額は変わりません。
結局カリフルニア産のコシヒカリが激安価格で買える様に感じますが
実際には10kg2,680円のコメを買うのと同じで
それなら少々高くても安心・安全な国産コシヒカリを選ぶ方が正解かも知れません。
ただ店頭に10kg4,000円の国産コシヒカリと1,000円のカリフォルニア産コシヒカリが
並んで置かれていれば、家計を預かる奥様方にとってこの差はかなり大きいと思います。
しかしその裏では国民の血税がばら撒かれていることも知って置く必要があると思います。