東京、大阪の両証券取引所は十六日、通常の株取引である「現物株」の売買を東証に統合する。統合の狙いと、世界的な取引所間の競争を勝ち抜く戦略をまとめた。
Q どうして市場をまとめるのか。
A 両取引所は今年一月、持ち株会社「日本取引所グループ」(JPX)の傘下に入った。それぞれが別々に売買システムを運用するより、どちらかのシステムにまとめた方が効率は上がる。「JPXが通る第一関門」(東証の清田瞭社長)と位置付け、通常の株取引を東証に一本化することにした。
来年三月には先物などの「デリバティブ(金融派生商品)取引」が大証側に集約される予定だ。
Q 市場の規模はどれぐらい大きくなるの。
A 大証一部の企業は東証一部に、大証二部の企業は東証二部へ原則移行。大証が運営する新興市場「ジャスダック」は市場ごと東証に移る。つまり東証は一部、二部、マザーズ、ジャスダックと上場基準など性格の異なる四つの市場を持つことになる。統合後の東証の上場企業数は千百社増の約三千四百社。米ナスダックやニューヨーク証券取引所などを抜き、世界第三位の規模となる。
Q 企業と投資家のメリットや注意点は。
A 東京と大阪双方に上場している企業は、取引所に払う費用が一カ所で済む。また、大証より取引が活発な東証に移れば、今までより売買が成立しやすいメリットも出てくる。一方で投資家の注意点は売買時間の変更だ。取引終了時刻は東証の午後三時に対して、大証は午後三時十分。今後は東証側の午後三時に統一される。
Q 巨大市場になれば、しばらくは安泰だね。
A 上海や香港などのアジア市場の成長は著しく、うかうかしてはいられない。清田社長は「世界で存在感を高めるため日本株以外の商品も増やす」と強調。海外市場の値動きと連動した上場投資信託を増加させるなど、品ぞろえの充実に意欲を見せている。
Q 今後はどう動くの。
A システムの統合などで年間八十五億円の経費が削減できるという。このお金を使って、二〇一五年に東証の売買システムを更新。注文スピードを現在の千分の一秒から短縮し、取引所間競争を有利にしたい考えだ。