沖縄電力を除く全国の電力九社が二十六日に開いた株主総会で、北陸以外の八社では、個人株主を中心に原発の廃炉など「脱原発」を求める株主提案が提出された。提案は原発の早期再稼働を目指す電力会社側の意向通りにいずれも否決されたが、各社の総会会場では原発からの撤退を求める声が相次いだ。
北陸を除く電力八社では、事前の株主提案が計七十二件あった。このうち、脱原発や原発の廃炉を進めるための体制強化などを求める提案は三十二件に上った。東京電力福島第一原発事故から二年以上を経ても、脱原発を求める声が根強いことが浮き彫りとなった。
東京電力は、昨年七月に実質国有化されて以降、初めての定時株主総会を開いた。福島第二原発や柏崎刈羽原発(新潟県)の廃炉など、過去最高となる十五件の株主提案が事前に寄せられた。しかし、総会では質疑が途中で打ち切られ、株主提案はすべて否決された。
ただ、東電が経営再建策として、柏崎刈羽原発の再稼働に向けた準備を進めていることに対し、株主からは「地元が反対しているのに、再稼働は不可能。現実を見た経営をするべきだ」などと、批判的な意見が続出した。
総会の所要時間は三時間四十一分と、昨年より二時間近く短かった。
◆「東電身内に甘い」 国支援受けながら高収入
実質国有化された東電にも脱原発の声は届かなかった-。二十六日の東電の株主総会では、保有する原発の廃炉などを求める株主の提案はすべて否決された。議長を務めた下河辺和彦会長は、発言を求める個人株主が多く残っているのに質疑を打ち切るなど、株式の過半数を握る国の力を背景に強硬な議事運営を見せた。株主からは「東電の体質は変わっていない」と落胆の声が漏れた。
「東電の生え抜きではない(下河辺)会長になり、会社が変わると思ったが、目立った変化はない。原発の廃炉に向けた意識改革を進めてほしい」
総会では、女性株主が東電の経営陣に原発事業からの撤退を迫ったほか、男性株主も「原発を使わない東電の株主になって誇りを持ちたい」と述べるなど、脱原発を求める意見が相次いだ。
だが、広瀬直己社長は「(柏崎刈羽原発の)運転再開に向け、安全性向上の対策を確実に実施したい」と、早期再稼働に固執する考えを繰り返した。
株主からは東電の経営体質を問う声も。東電は国からの財政支援がなければ、破綻の危機に直面する。一方で電気料金を値上げしたにもかかわらず、社員の平均年収は五百四十八万円と大企業並みの水準を維持しており、「身内に甘い体質は変わっていない」との指摘が出た。
まだ発言を求める株主が残る中、下河辺会長はいきなり質疑の終了を宣言。「議論を尽くしていない」「議事運営がひどい」と反対する株主の声を振り切り、総会を強引に終えた。開催時間は昨年より大幅に短縮された。