三菱東京UFJ銀行がタイの大手商業銀行、アユタヤ銀行を買収する方向で最終調整に入ったことが二十二日、分かった。買収額はおよそ四千億円規模で、七月初めの合意を目指す。邦銀によるアジアの銀行の買収案件としては過去最大の金額で、邦銀がアジアで大手銀行の経営に直接乗り出すのは初めて。
三菱UFJは、アユタヤ銀の株式の25%を保有する米ゼネラル・エレクトリック(GE)から株式を取得。経営権を握るため、株式公開買い付け(TOB)を行って、51%以上の株式取得を目指しており、経営陣も派遣する。
三菱UFJは、成長著しいアジアで、所得水準が高まっている中間層を照準に、個人向け業務に本格参入する。アユタヤ銀はタイ国内で五番目の資産規模があり、個人向け業務にも強みを持つ。親日国で知られるタイで同行を傘下に収め、顧客基盤を一気に拡大し、住宅ローンなど個人の資金需要を取り込む。
またタイは日本の自動車メーカーなどの一大生産拠点になっており、進出日系企業への融資などの取引をさらに深める狙いもある。
これまで邦銀の海外戦略は、現地に進出した日系企業など法人向け業務が中心だった。だが、三井住友銀行が五月、インドネシアの年金貯蓄銀行の株式の40%を取得し、個人向け業務に本格参入するなど、アジアで台頭する中間層の取り込みが主戦場となっている。
<アユタヤ銀行> 1945年に設立された、資産規模でタイ5番目の商業銀行。77年にタイ証券取引所に上場した。ラタナラック家がオーナー。2007年に資本・業務提携した米ゼネラル・エレクトリック(GE)も株式の25%を持つ。GEグループとは消費者金融事業で戦略提携したほか、自動車リース事業でも提携するなど、つながりが深い。