今回の暴落が、選挙にどのように影響するか、アベノミクスの行方が掛かっています。というのも、株価と内閣支持率との間には、かなりの相関関係があるからです。今までの高い支持率は、株価のおかげという人もいます。その意味からも、今回の暴落は、現政権にとって最悪の時期といえます。私はヘッジファンドも、選挙前は動かないと見ていたのですが……。
参議院選挙の結果は、内閣支持率でおよそ見当がつきます。前回の安倍内閣は、小泉内閣を引きついで、06年9月に発足しました。当初70%近くあった支持率は、郵政民営化に反対した議員を復党させたことなどで急落し、翌年の1月には20%台にまで落ち込みました。結局、支持率を上げられないまま、7月に行われた参議院選挙で大敗し、政権の座を投げ出すことになったのです。
今回は、閣僚の人選、政治運営などで、国民から高い期待を受けていますが、その背景はアベノミクスに対する経済再生の期待です。安倍総理は高い支持率を受けて、TPP,原発、沖縄問題、選挙制度、年金福祉、外交とかなり思い切った政策を実行してきました。
党内外には必ずしもこれらの政策に満足している人ばかりではありません。株価だけが経済再生の物差しだけではありませんが、これだけ暴落すると、アベノミクスに対する疑問符がついてきます。それが支持率になって現れることは当然予想されます。
いきなり20%台に落ち込むことはないと思われますが、50%を切るようなことになると、かっての民主党政権のように党内がまとまらなくなり、政策が実行できなくなります。このところ読者数を減らし出番のなかったマスコミも、円安で上がる食料品物価などで、安倍政権の経済政策批判を繰り返します。これがまた支持率を落とし、政局が安定しなくなり、あの「失われた20年」に逆戻りしてしまいます。
どんな政権でも、何をやるにも、リーダーシップがなければできません。リーダーシップを支えるのが、支持率であり選挙なのです。
国会の論戦もほとんど終わり、いよいよ選挙モードに突入です。選挙の読みは、前回でもお伝えしたように、高い支持率の下でも決して楽観を許す状況ではありません。制度上の問題点と、参議院選挙は政権与党に不利に働くという選挙民の意識があるからです。「ほんのちょっとお灸をすえたかった」などの軽い気持ちで投票する人も多いのです。
選挙まで後1ヵ月半です。この間で支持率を大きく変えるものがあるとすれば、アベノミクスの検証です。それが、経済再生で政権交代を果たした自公連合の評価が選挙です。株価を維持しないとあの悪夢の再現となります。
今回の暴落の原因は……、10兆円も買った外国人が、アメリカの金融緩和解除で資金を引き揚げるという市場の不安に、ヘッジファンドが乗って大儲けしたためです。
この不安が払拭されない限り、彼らはまた仕掛けてきます。不安の解消こそ、今早急に求められています。
私は、3月までは外国人が、4月から選挙までは金融法人と個人が、選挙後は企業法人、来年以降は日本の富裕層が、買いを担うと読んでいました。そうして安倍内閣の4年間に、株価が20,000円の高値を付けると予想したのです。
ところが外国人の買いは5月まで続き、しかもその額が予想を超えて10兆円にも及びました。一方の金融法人は相変わらず大幅な売り越です。やっと先週GPIFが、わずか1%ですが国内株式の投資割合を引き上げた程度で、郵貯はトップの交代劇で、国内金融機関も株主総会を控え動けず、不安の改善には役に立ちません。
90年代までは、政府が主導して、余剰株式の買い上げ機構を作り、市場不安の解消を図ったのですが、選挙を控えて学者の間に不人気な政策が出るとは考え難いところです。
需給が図れる唯一の方法は、日銀によるETF購入です。日銀は先週の木、金の両日にそれぞれ198億円のETFを買い上げましたが、暴落時ばかりでなく上昇時でも、決められた金額を一定割合で購入すれば、市場の不安はかなり改善されます。白川総裁時代には、「TOO LITTLE, TOO LATE」と揶揄されましたが、やる以上思い切ってやることです。
市場資金を増やし円安に誘導し、成長戦略に市場が期待する対策を加えれば、長期的な株価上昇には繋がるでしょうが、選挙対策にはかえって逆効果です。
国の経済が、ヘッジファンドに握られているなんて、マンガの世界かと思っていました。でも現実に起ろうとしています。「株価の動きに一喜一憂しない」なんていっている場合ではありません。
市場の不安定が選挙まで収まらず、万が一自公が選挙で負けると、外国人は本当に引き揚げます。そのときの株価は……、想像してみてください。
最近の支持率は、いずれ発表されるでしょうが、23日に行われる東京都議会議員選挙で、参議院選挙の情勢がほぼ分かります。ここ2週間が山です。
それまでに外国人の代わりになる投資主体を作り、市場から暴落の不安をなくすことです。需給対策に全力を挙げてください。そうしないと、元も子もなくしてしまいます。
これが投資家から見た選挙対策です。そうして、
選挙に勝って、日本人が安心して株を保有できる時代を作り上げてください。