株価は需給で決まりますが、その最先端にあるのが、株価ボード上にある売り買い8本値(板情報)です。板情報は、売り買いの値段と数量を知る上で、最も重要な情報で、売り買いの値段を計る唯一の手段といっていいほどです。ところが、その板情報が、まったく当になりません。
寄り付きの需給は、取引参加者が最も集中する場であり、成り行き注文の多いところから、一番売り買いが成立しやすい取引に当たります。ある意味では一番操作が難しい価格ですが、それとても気配値は当にならなくなってきました。というのも、東証の高速処理システムの結果、注文を場に出すスピードが格段に速くなり、直前まで寄り付き値が分かりません。その結果、気配値にしたがって、成り行き注文を出せば、とんでもない価格でできてしまう場合もあります。
ザラ場でも、出来高の少ない銘柄については、値段は3円となっているのに、3カイ4ヤリとならずに、1カイ4ヤリとなる場合が目立つようになってきました。板に現れない裏注文が2円、3円に這わされているのです。
この裏注文を見つけようと、2円、3円と、1円刻みに注文を出しては引っ込めるレーダー光線のような指値注文もあります。さらに、4円の売買が成立するとすぐに同じ値段で売り物が出てくる「条件付指値」、注文に合わせて同値に指値を乗せる「ツケロ売買」、指数とか特定の銘柄の株価に連動して注文できる「プログラム売買」もあるようで、あの手この手のかく乱作戦です。板情報を当にすると思わぬ落とし穴にはまってしまいます。
以前、どこかの大学生グループが、大量の見せ板を使い、不正に数億円もの利益を上げ検挙された事件がありましたが、今はプログラムを使った見せ板は当たり前のように使われています。上の例で、6円に30,000株の売り指値があり、上値は重いと思っていたら、5円ができた途端に、30,000株の売り指値が消えてなくなります。
プログラムを使った見せ板が、どうして金融商品取引法に違反しないのでしょうか。いずれは問題となるでしょうが、大量に出ている指値注文は、プログラム板と思って無視するより仕方ありません。
どうやら最近では、プログラムでの売買が、個人レベルにも広がっているようです。私が使っている証券会社に、問い合わせたところ、従来から広く使われている「逆指値」以外に、「ツイン指値」、「先頭指値」などの指値注文は、この会社でも用意されているようです。プログラムを個人で作成したり、購入したりして使っても、特に問題ないとのことです。
個人が使うプログラムでも、動きに乗る順張りが多く用いられていますので、変動幅は大きくなる傾向にあります。5月23日の1,000円を超える大幅な下落については、麻生大臣からも高速処理とプログラム売買について苦言がありました。ある意味では、大臣が高速処理とプログラム売買の優位性を認めたともいえます。
個人が、ヘッジファンドと争うには、プログラム売買しかないとなると、相場に魅力を感じる人はいるでしょうか。無機質な売買だけが市場を支配し、最強のプログラムを販売する人が儲かるなんて、未来戦争後のむなしい社会を見るような気がします。
パチンコもコンピューターで出玉が決まるそうです。あの暴落を見る限り、株の儲けがコンピューターで決まる日は、すぐそこまで来ているように思えるのですが……。