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黒田日銀総裁がんばっているよ

[東京 26日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は26日、都内で開かれた日本金融学会の春季大会で講演し、金融機関の金利リスク量が増加していることに関し、日本の金融機関は十分な自己資本を有しており、仮に金利が1─3%ポイント上昇しても、金融システムが不安定化する懸念は大きくないと語った。その上で日銀として、「量的・質的金融緩和」に伴ってデフレから脱却し、金利は上昇していく中で、金融システムの耐性を点検することが重要な課題と述べた。

 

 <金融機関の金利リスク増大、デフレ脱却の過程で耐性点検>

総裁は、現在の日本の金融システムについて「安定性の面で大きな問題が生じているとはみていない」としながら、長引くデフレと貸出低迷の中で、債券投資に伴う金融機関のリスク量が積み上がっていると指摘。日銀が4月4日に打ち出した「量的・質的金融緩和」は、金融システムの「こうした現状に変化をもたらす」とした。

「量的・質的金融緩和」によってデフレから脱却し、2%の物価上昇率目標を達成していく過程では、日銀として「金利上昇に対する(金融システムの)耐性を点検していくことが重要な課題」と語った。もっとも、現状では金融機関が、負っているリスクに対して十分な自己資本を備えており、金融システム全体として「金利の上昇や大幅な経済の悪化といったショックに対する耐性を十分に備えている」と指摘。仮に、今後金利が1─3%ポイント程度上昇しても、経済・物価情勢の改善が背景であれば「貸出の増加や利ザヤの改善、株価の上昇などにより、金融機関の収益にプラスの影響が及ぶ」とし、「金融システムが不安定化する懸念は大きくない」と語った。

 

<財政懸念による金利上昇を警戒、政府は財政健全化を>

一方、経済環境の改善ではなく、財政懸念の強まりに伴う金利上昇の場合は「金融機関には債券評価損という負の影響が出てくる」と述べ、財政の持続性への懸念を生じさせないためにも「政府における財政構造改革に向けた取り組みを着実に進展させていくことが重要」と強調。デフレ脱却のためにも、政府に対して「財政健全化、成長戦略の明確化と実行を強く求めたい」と語った。

 

 <金融機関は主体的な取り組みを、金融不均衡はみられない>

その上で、現在の金融機関における金融仲介活動は「活力やダイナミズムあふれる姿とはいいにくい」と指摘。こうした状況を「長引くデフレと経済の停滞、資金需要の低迷の反映」とし、金融機関の間の競合が激しくなっている中で「利ザヤ改善に転じるために、どの程度の需給環境の改善、資金需要の高まりが必要になるかは未知数」とした。一方で、金融機関に対して受け身にならず、「主体的に企業・家計の前向きな行動を引き出し、金融仲介機能を高めていく努力を期待したい」と要請。日銀としても、成長基盤強化支援や貸出増加支援を目的とした資金供給制度などを通じて「金融機関の貸出業務を支援していく」との方針を示した。

さらに金融システム安定を目的とした日銀の「プルーデンス政策」と「量的・質的金融緩和」の関係では「リスク量を経営体力との関係において適切に管理することを求める」との基本方針は「不変」と強調。仮に金融面での不均衡が生じていると判断されれば、「何らかの対応を講じていくことが基本」とながら、「現時点では、資産市場や金融機関行動において、過度な期待の強気化を示す動きはみられていない」と述べた。また、金融システム全体としてみれば、「家計の資産選択が預金以外の金融資産に多様化していく方が、ポートフォリオ・リバランスの観点からも望ましい」との認識も示した。

 

<物価2%目標、期待要素ないと達成できない>

金融政策運営では、あらためて「量的・質的金融緩和」は、2%の物価上昇率目標を2年程度で達成するとのコミットメントを「明確に裏打ちする手段」だと強調。政策効果などにより、今後は潜在成長率を上回る成長が続くことで、需給ギャップ改善による物価上昇が期待されるが、「期待という要素を入れないと(目標は)達成できない」と主張。期待への働きかけによってフィリップス曲線を上方シフトさせることの重要性も強調した。

 

(ロイターニュース 伊藤純夫 編集 宮崎大)

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