株価はバブルの崩壊で6分の1ほどになりましたが、私の場合は、時期のずれはありましたが、02年に10分の1にまで落ち込みました。どうしてでしょう。落ち込んだときの反省と、その後の立ち直りの記録です。
バブル期の投資行動
私の株投資は40歳に始まりました。両親からの生前贈与100万円で、三共株4千株を買ったのが最初です。その後は、仕事でえられた情報を生かして、月に一回くらい銘柄の入れ換えをやる程度でした。それでも、バブルが始まる83年ころには、10倍を超えるまでになっていました。
バブルで経済成長が加速する中、私の投資法も、保有から積極に変わってゆきました。土地持ちで収益力の低いボロ株を、値が動かないうちに買って待ち、動いたときに買い乗せる方法で大儲けしました。ボロ株ほどよくあがり、大型優良株はそれほどでもありません。株は買って持っていれば上がり、資産は毎年倍倍で増加してゆきました。それでも頂点付近では、買いたい銘柄が極端に減って、資金の半分程度は現金で持っていました。
90年に入り、10%ほどの暴落に見舞われますが、その後は少し戻しまた下げるという形で下げ続け、株価指数で年間40%に達しました。ボロ株の下げは更にきつく、私の株資産は半分にまで減少しました。せっかく天井付近で現金化した資金を、暴落して行くボロ株買いにつぎ込んでしまい、傷口を広げる結果になりました。
教科書的に考えると、値上がり時に暴落に備えて、現金ポジションを多く持つとか、ヘッジ売りをすることになっていますが、毎日が儲けの連続の中でそんな考えは及びもつきません。仕手株の売りで命をなくした人の話から、カラ売りは性に合いません。
一度身についたうまい話は、簡単に変えられないものです。弾けた後で冷静に考えると、何であんなボロ株に手を出したのだと思うのですが、その渦中にいると、株価の異常な高騰を、自分で勝手に正当化してしまっていたようです。土地バブルが弾け、金融機関の倒産劇にも、まだ頭の中から土地神話は抜けなかったようです。いずれ回復すると。
90年代後半のITバブルでは、電気、通信、電子部品などの銘柄に10倍20倍となるものが続出しましたが、土地持ち会社中心の私のところには恩恵が及びません。何とか立ち直りたいと、政府の公共工事拡大に期待をかけて、土地持ち会社から土木建設会社へ持株をシフトしたのですが……。
駄目なときには、何をやっても裏目に出ます。大きな借金を抱えていたこれらの会社は、金融機関からの支援打ち切りで、相次いで倒産に追い込まれ、私の持株からも3社倒産しました。信用の期日に追いまくられ、損切り資金捻出のために、親に頭を下げ借金しました。
02年は、私にとって最悪の年となりました。95年に退職金をつぎ込んで設立した有限会社でも、株式の評価損で大幅な赤字を出す始末。考えることはブルーテント暮らしか樹海行きです。でも、「株をやめてどうして生活するの。南の島で暮らす夢は?」と。
このころからITの普及で、投資環境も大きく変わりました。ネット利用で手数料が大幅に安くなり、税制の改正で個人にも損出の繰り延べが認められるようになりました。個人も機関投資家と同じ土俵で投資ができるようになったのです。私も証券会社をネット証券に換え、ネットの掲示板で意見交換をし、ケーブルテレビで市場の雰囲気が分かるようになりました。
悩んでも仕方ありません。バブルの反省から、配当金で生活する株式投資理論を打ち立て実行に移しました。ファンドを設立し、投資資金と生活資金とを明確に分離し、配当取りのポートフォリオで株式を運用することにしたのです。
それに合わせて資料の整理をし、売買記録、資金収支、配当金、持株数、時価評価額、信用取引結果など、投資を始めてからの記録をすべてコンピューターに保存しました。これで、生涯キャッシュフローが、大幅な受け取りになっていることが明確になりました。バブルのとき、家の改修や子供の養育資金などで儲けの一部を引き出したためですが、持株が只になっているのは、やはりバブルのおかげだと感謝しています。
持株は買値から5分の1程度になっていましたが、思い切ってほとんどを損切りし、会社も整理し、その資金で高配当の優良株を購入しました。株数は大幅に減りましたが、配当金は増え、小泉改革で持ち株も率先して上昇し、05年には持株の評価額もバブル期の4割ほどに回復したのです。リーマンショックも配当金の落ち込みは軽微で、「株は売ってなんぼ」と、それほど気にしないで乗り切りました。そして今回のアベノミクスで、先が見通せるようになって来たのです。
以上が私のバブル人生日記です。失敗の原因を一言でいえば、バブルとはどんなものかがよく理解できなかったからです。その教訓は、どのように生かされ実行に移されたのでしょうか。以下はその「まとめ」です。
悪かった点
(1)ボロ株で成功し、ボロ株でやられた。
(2)ITバブルに乗れなかった。
(3)持株から倒産会社が続出した。
(4)株価の異常な高騰を自分で勝手に正当化してしまった。
(5)投資と生活資金が混在していた。
改善した点
(1)ボロ株を損切りし、配当重視の優良株に乗り換えた。
(2)投資方法を投資環境に合わせて見直した。
(3)記録を整理し、ファンドを作り、金の出入りを明確にした。
反省したけどやらなかった点
(1)ヘッジ売りや現金ポジション増などの株価下落対策。
(2)カラ売り。
(3)デイトレや短期投資中心の投資方法。
(4)外国為替、商品、投信などへの投資分散。
ほめたい点もほんの少し
(1)決して諦めなかった。
(2)儲かったときに資金を回収した。
もしこんどバブルに遭遇したら
(1)大いに儲けて今度こそ南の島へ。