これからは、いよいよアベノミクスへの期待が実行段階になります。「期待で買って実現で売る」のか、あるいは「期待が実現される」のか、が試されるわけです。
それを表わすのが株価です。具体的には、企業業績と需給です。
アベノミクスの効果は、次のような時系列で実現されます。
第1段階…… 超金融緩和、財政出動、成長戦略への期待
第2段階…… 円安、(株高)
第3段階…… 企業業績の向上
第4段階…… 下請け、中小への波及、雇用拡大、賃上げ
第5段階…… 需要増加、(資産効果)による物価上昇
第2段階までは、順調に進展し、円安と財政出動で株価も大幅に上昇してきました。いよいよ、第3段階の企業業績の向上が試されるときに当たります。これからゴールデンウィーク明けにかけて、企業決算が発表され、アベノミクスの経済効果が現実化したかどうかが確認されようとしています。
私は、今期の企業収益(2014年3月期)は、円安と財政出動効果で、EPSで1,000円近くにまで急拡大し、次の期には、成長戦略と資産効果が加わり空前絶後、かってなかった1,200円程度になると推定しています。そうなれば、PER20倍まで買っても24,000円となります。
例年、発表される企業収益見通しは保守的で、ヘッジファンドの決算や配当金・税金還付の一巡などから、「5月売り」などが予想され、この時期の需給は、株価調整に向かいやすいとされています。今年はどうでしょうか。
アベノミクスが試されようとしているときに、指標である株価の下落は考えられません。海外株価が下落しても上がります。その判断基準は次の2点です。
1. 株価の位置と収益向上期待。
株価の位置が天井付近にあればいくら対策を打っても、買う人より売る人が多くなります。今の位置は、経済が上向きに転じている上に、PERなどの株価指標、出発点からの上昇期間が短い点など、どれをとっても上昇の余地があります。本年度の企業収益見通しは、円安効果でかなりいいはずです。
中国景気の後退は、日本への影響は少なく、むしろ資源価格の下落が円安による物価上昇圧力を抑え、物価安定下での景気上昇が達成される可能性さえ出てきました。
私は現在の株価位置を、4年間の目標(内輪に見て20,000円)に対しては5合目、今年(内輪に見て15,000円)に限れば7合目付近、と見ています。
2. 投資環境の変化と参議院選挙までの株価対策。
投資環境の変化こそが、政権交代の最大の収穫です。民主党政権では、株価を口にする人はほとんどいませんでした。経済の建て直しをアピールして政権復帰を果たした自公連合は、経済回復にデフレからの脱却を目標としています。超金融緩和と円安を手段として使い、その物差しとして株価を使うようにしたのです。
お手本はアメリカです。バーナンキ議長が取り入れ実行し、100年に一度の大不況をわずか4年で回復させた経済政策です。財政出動ではなく、金融政策で景気浮揚を果たしたのです。世界景気を回復させ資本主義を救ったのです。金融緩和の手段としての国債、不動産担保証券などを買い入れは、リスクの国への移転として反対論も多かったのですが、結果として国に莫大なリターンをもたらしました。
これがアベノミクスの本質です。日銀が物価目標を取り入れ、リスク資産を大量に買い入れ、市場に大量のお金を供給します。日本では、アベノミクスの効果として、インフレが実現するかの議論がありますが、工程表にもあるようにインフレは効果の実現の最終目標です。そんなことより、株価が上がるかどうかです。
リーマンショック以降、QE政策を取り入れたアメリカ経済は、雇用が回復しないまま、株価だけが史上最高値を追っています。大量の資金が株式市場に流れ込み、株価を押し上げ、それによる資産効果が経済を立て直したのです。
株価は経済状況の鏡といわれ、経済がよくなれば株価が上がるというのが表向きの議論です。裏の理論は反対です。株価が上がれば経済がよくなるのです。現に株価は6ヶ月先の経済を反映します。土地とか株価上昇による利益は、バブリーな収入で非日常的な消費に早く使われるために、乗数効果も高く経済活性効果が顕著に現れます。学者はあまり言いませんが、経済回復には株価の上昇が絶対に必要なのです。
日銀黒田総裁は、それを一番知っていますが口には出しません。学者から反論が出るからです。買い入れるリスク資産として2倍のETFの買い入れを決め、増やす可能性も示唆しています。日銀の買い入れで、市場価格をゆがめてしまうという反対もありますが、下がらないと商売にならない株屋の理論です。株が上がったほうが下がるよりいいと、判断される限り買えばいいのです。
経済状況の判断にも、「円安と株価の上昇で景気が上向いた」と、株価が経済にとって重要な要素であることを認めています。経済の建て直しの尺度として、株価が使われるのは世界共通の認識です。株価はその国の経済力を表すのです。政府も日銀も、やっと世界共通の物差しを使うようになってきました。
政権与党としては、更に株価を上昇させ経済上昇をより確実なものにして、消費税引き上げを円滑にしたいところです。そうして、安部政権が目指す究極の目標、参議院での憲法改正勢力を3分の2以上にしたいのです。
そのためには、経済・官界を挙げて株価対策に当たります。アメリカまでも安全保障のために支援に回ります。今まで売りに回っていた金融機関も、選挙までは売りを控えるでしょう。日銀は、毎年1兆円のETFを買うことを決めていますが、買う方法は公表していません。1兆円を選挙前に使うことも十分考えられます。
株を持っている人にとっては、これほどありがたい後ろ盾はありません。少しくらい株が下がっても、明日になれば株価対策が打たれる期待が沸いてきます。
「猫でも儲かる相場」は、7月までは続く可能性が高いと判断しています。株の含みを眺めて「儲かった、儲かった」といっている猫と、わずかばかりの利益を数多く確定し、証券会社を喜ばせている人間との争いは続きそうです。
さて、2008年6月に、同じようなテーマを扱ったときは、どのような相場環境だったのでしょうか。今の環境とまったく反対で、相場は、日替わりで上下に大きく動き、買い手がリスクを取れる状態ではなかったのです。
買い手にとって「猿でも儲かる相場」ではなく、売り方が、「猿でも儲かる相場」だったようです。私の日記は、「早く相場が落ち着きを取り戻し、買い手の損失処理が終わり、猿でも儲かる相場になることを願っています」で終わっています。