インフレ目標政策は、物価を安定させ、バブルとデフレを防ぐ政策。
しかし、物価が安定してても、資産価格が不安定ということはある(一般物価を抑えた分、資金が資産に流れまくるとか、、)。
90年バブルもリーマンショックも物価は安定していたが、資産価格の上昇でバブルが起きた。
90年バブルでは不動産価格、リーマンショックでは証券化商品など派生市場(不動産ではない!)がバブリー化した。
バブルが起きれば、それとセットでデフレが起きる。
バブルを防げねば、デフレも完全には防げない。
インフレ目標政策は(デフレ脱却には有効だが)バブル抑止には力不足、、ということです。
バブルを防ぐには資産価格の過剰な高騰を防がねば無理。
しかし、資産価格はどこから過剰になるかはなかなか分かりにくい。
それは、資産価格が将来的な成長率見通しで決まる側面があるため。
だから、資産価格を政策目標にするのは上手くない。 それでは、過度に抑えたり、抑えが緩すぎたり、不適切になりやすい。
特に証券化商品など先進的な派生市場の資産では、公的機関が適正価格の見当をつけるのは不可能に近い(公的機関は市場的には最も遅れた組織なので)。
少し話は変わるが、名目成長率目標政策も同様の問題がある。
イノベーション・生産性の変化はリアルタイムでは捉えにくいので、目標とすべき適正な名目成長率が分からないのです、、、ゆえに、実態経済の動向とそぐわない過度な成長抑制政策や、バブリーな成長政策に陥りやすい。 そのうえ、指標とする名目成長率自体も誤差が大きく、直ぐには分からない、という問題がある。 機動的な金融政策をとれないので、バブルの時は致命的です。
だから、資産バブル防止の政策目標は、資産価格や名目成長率でなく、資産バブルと強い相関を持つ金融機関の融資態度(リスク性向)に置くべき。
これだと、政府や公的機関で把握しきれない派生市場のコントロールも可能になる。
融資態度(リスク性向)をコントロールすれば、当然、派生市場に流れる資金もコントロール出来る。
融資態度(リスク性向)のコントロールには、資本規制がポイントになる。
つまり、金融機関の自己資本比率を動的に管理することがポイントになる。
好況時には厳しい資本規制、不況時には緩い資本規制にすること。
これは過去のバブルとの相関関係から適正水準の当たりを機械的につけやすいのです。
物価同様、適正レンジを把握しやすく、シンプルで扱いやすく、ほぼリアルタイムで処理出来る。
(補足) 中国発のデフレ圧力が一般物価に働く状況では、インフレ目標政策では過剰な金融緩和になりがちで、資産バブルを起こしやすい。 中国発の一般物価の下押しに抗し、過剰な緩和になりがちで、過剰でも一般物価がほとんど上がらないので、余剰資金が債券高、金利低下を起こし、景気過熱、融資態度のゆるみ、派生市場のバブルが起きやすいのです。 しかし、政策当局が一般物価しか見てないと、それはなかなか分からない。 打つ手が遅れがち。
中国発のデフレ圧力が働かなくても、『不動産神話(人口密度が高い日本では不動産価格は下がらない等)』みたいなことがあると資産バブルは起こりやすい。 日本では角栄の列島改造論以来、こういう神話が醸成され、90年バブルを起こした。
(補足) 『インフレ目標はインフレ抑制の為の政策であって、デフレ脱却への効果は不透明』という論説が日本では流布されてるが、これは誤りである。
リーマンショック震源地の米国では、ほぼ金融緩和一本でデフレから2年で2%インフレ率に回復した。 この間、財政政策は中央政府で拡大するも、州政府等地方は引き締めでプラスマイナスゼロであった。 つまり、インフレ目標はデフレ脱却に有効なことは明らか(米国の金融政策はインフレ率の安定と雇用の最大化を使命としているので、実質的にインフレ目標政策と同じである)。 逆に、実質、インフレ目標を取っていたにも関わらず、資産バブル、派生市場バブルのリーマンショックを防げなかったことから、インフレ目標がインフレ抑制、バブル防止に不十分なことも明らか。