こころネットによる郡山グランドホテルの買収方法ですが、
株式交換で、対価を自社の株にしたことは非常に良かったと思います。
平成25(2013)年2月21日に株式交換比率が決定。
郡山グランドホテルの価値=こころネットの新株発行数=30万株分と算定されたことになります。
なお、こころネットは平成24年9月末現在で3,543,100 株を発行しており、希薄化率は8.47%です。
発行数量としては、これ以上は受け入れ難いでしょう。
※第三位の大株主が現社長で、株式交換後は郡山のオーナーが第4位につくため。
郡山グランドホテル直近の決算 単体(平成24年6月末)では以下の実績です。
総資産 588,400(万円)純資産 258,900(万円)
営業利益 18,000 (万円)純利益 13,200(万円)
※計算しやすいように、万単位で揃えました。
【上記前提で、郡山グランドホテルの各種指標を算出】
これをもとに
同社の実績BPS,EPSを算出します。
BPS 258,900÷30 = 8,630(円)
EPS 13,200÷30 = 440(円)
さらに、
イ.株式交換時の新株発行数が決まった 2/21の終値
1,002円 ⇒ 30万株の時価は 30,060(万円)
ロ.実際に新株発行と子会社化が行われる直前 3/29の終値
1,485円 ⇒ 30万株の時価は 44,500(万円)
ハ.年初来高値
1,590円 ⇒ 30万株の時価は 47,700(万円)
をもとに、
郡山グランドホテル分の 平成24年6月時点での
実績PBR,PER を算出してみます。
【もっと評価されるべき水準】
イ.のケースで
PBR 30,060÷258,900 = 0.12(倍)
PER 30,060÷ 132,00 = 2.28(倍)
ロ.のケースで
PBR 44,500÷258,900 = 0.17(倍)
PER 44,500÷ 132,00 = 3.37(倍)
ハ.のケースでも
PBR 47,700÷258,900 = 0.18(倍)
PER 47,700÷ 132,00 = 3.61(倍)
※いずれも、小数点以下第三位で四捨五入
※※こころネットの場合、3/1時点のデータと3/29の終値で
予想EPS 135.5(円) 実績BPS 1750.57(円)
実績PBR 0.85 (倍) 予想PER 10.96(倍)
【ただし、さかのぼると赤字企業】
とんでもない割安査定ですが、郡山グランドホテルは
その前の2年間(平成22年6月期、23年6月期)は
営業利益、最終利益ともに赤字を出しています。
【平成22年6月期】 売上171200 営業損失 -5600 純損失 -3200 (万円)
【平成23年6月期】 売上106300 営業損失 -21700 純損失 -35700 (万円)
※参考
【平成24年6月期】 売上135600 営業利益 18000 純損失 13200 (万円)
<↑ここまで事実 ↓ここから主観>
平成23年6月期は、東日本大震災の影響によるものとしても
売上が多かった平成22年6月期で赤字を出しているのは、
非上場企業だとしても、痛いです。
【互助会の規模を推測する】
郡山グランドホテル単体の純負債は、329,500(万円)ですが、
この多くは、互助会やってる子会社に対する借入金/施設利用保証金と推測されます。
※4656:サン・ライフや2344:平安レイサービスの有価証券報告書を参考にしました。
こころネットの公表データで
会員数約32000人/積立金48億円 = 一人あたり 約15万円
郡山グランドホテル側の互助会員が16000人ということと、
純負債の金額から類推する限り、同社の子会社が保有する互助会積立金は
24~30億円程度と推測されます。
【今は石ころ 磨けばダイヤモンド】
郡山グランドホテルのホームページを見る限り、成金趣味っぽい感じがします(偏見)
ただし、郡山グランドホテルのオーナー社長にしてみれば、
自らにとって有益だったからこそ、この株式交換に賛同したのでしょう。
うがった表現をすれば、
オーナーは自分の会社を同業者に売り渡した代わりに、
その同業者から毎年900万円の配当を受け取り、ある程度経営に参画する権利
(時価3億円)を手に入れたことになります。
なお、この権利は1か月ちょっとで時価4億5千万円になりました。
こころネット側にしてみれば
自社の経営権、および利益の分け前を受け取る権利(総数の1割にも満たない)を支給して
純資産約25億 総資産約60億円の企業と、その企業が保有する顧客基盤を手に入れることに成功しました。
もっとも価値があるものは顧客基盤だと思います。
このことについては、
2.個別企業の事情 で。