日経への論説寄稿です。
デフレの原因は金融緩和不足のせいでない、、という論説になってます。
要するに日銀擁護論で、かなり苦しい論理展開になっている(国際的には発表できないような論説と思う(--;)。
さて吉川論説のおかしな点は次のとおり。
・ 生産性向上と階級的賃金抑制により起きた19世紀イギリスのデフレを日本のここ20年のデフレと比肩してる。
ーーーーーーーーーーー日本のデフレは19世紀イギリスと同じメカニズムで起きてない。 この20年、日本の生産性向上は概ね他国以下で通貨供給量は他国より突出して低い、、、つまり、通貨供給不足によるデフレだったことが明らか。 19世紀イギリスのデフレとは明らかに異質。
・ 90年代の国内設備投資低迷を実質金利高(デフレ)のせいでなく、イノベーション欠如のせいと断じている。
ーーーーーーーーーーー90年代に国内設備投資低迷になったのは、バブル崩壊後の過剰債務で金融機関の融資姿勢が厳しくなったことと、円高トレンドで国内生産が内外需ともペイしにくくなったため。 こういう状況でイノベーションが起きるわけはない。
イノベーション不足は設備投資不足の原因でない。 原因は通貨供給量の不足=デフレです。 なぜなら、過剰債務問題を厳しくしたのは、インフレ期待の低下であり、円高トレンド同様、その原因は通貨供給量の(国際的に)突出した過小にあるから。
・ 今現在、デフレスパイラルになってないことから、デフレは日本経済にとって脅威でない、、と断じている。 さらに、デフレの原因はイノベーションの長期経済波動(コンドラチェフ循環)のせい、と論じている。
ーーーーーーーーーーー今現在、デフレスパイラルに陥ってないのは、竹中・小泉時代に不良債権処理と金融緩和を進めたからであり、民主党きちがい政権の後に安倍首相がインフレ目標導入をうたったから。 それでも日本のインフレ率はゼロ%そこそこに過ぎないのだから、金融緩和の手を緩めれば、再び、危険な状況に陥るのは目に見えている。 デフレは今も脅威ですよねえ(--;
ーーーーーーーーーーーデフレでイノベーションが起きるわけはないのだから、長期デフレを起こした政策ミスがイノベーション低下の原因。 吉川論説は原因と結果を逆に見ている。 イノベーション不足でデフレが起きる、、、という吉川論説は、イノベーションが起きた19世紀イギリスでデフレになった事実とも矛盾しますねえ(--;
・ 円安で増益化しても企業は国内投資は増やさないかも、、という不可解な懸念を示している。
ーーーーーーーーーーー円安というか、適正レートが持続すると企業が見なせば、内外需企業とも国内投資を増やすのが普通。 そうならないのは、適正レートが持続しない=インフレ目標政策が一時的、もしくは不十分、と企業が見なす場合。 吉川論説は、暗に、そうなることを匂わせているとも言えます。
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総じて、吉川論説は、日銀・財務省擁護的、金融緩和(インフレ目標)抑制的で、これは財務省の省益(再増税路線)に符号している。
吉川教授が、国際的、学術的に見ればピエロとも見なせる不合理論説を乱発するのは、そこに政治的バックアップがあるからでしょう。
インフレ目標政策が不十分になる可能性を注視です。
不十分になる原因は、黒田総裁の財務省との結託、もしくは財務省に支配された金融業界の反市場原理的行動(物価上昇でも融資を増やさず)、、です。
で、これらが起きる時期は消費税10%実行後のいずこか、、、
さて、こうならないのが国民益にはベターですが、政治的には金融緩和けん制、再増税へのうごめきが多々ある(財務省・日銀はさりながら、政界(民主党や麻生氏など自民党守旧派)、学界、エコノミスト、金融業界、マスコミ)。
次の参院選で、みんなの党が躍進しないと日本経済は危ない
(みんなの党躍進でも自民議席は依然大きいので、安倍政権は存続し、みんなの党の圧力で改革路線がむしろ強化される。 この場合、インフレ目標は十分維持され、再増税は回避され、成長率アップの政策へ本格的に移行するかも、です)
(補足) 吉川教授によれば、賃金低下もデフレの原因だそうな。 インフレ期待の低下(景気先行きへの悲観)=デフレ期待の増大があるから、経営者は賃下げやリストラをやるわけで、賃金低下は明確にデフレの結果ですよね。 吉川教授は、どこまで逆立ち論説を続けるつもりだろうか? まさか、授業でもそう教えてる!?(--;
(補足) 3/14の岩井克人氏(ICU教授)の論説は合理的です。 ただし、通貨供給量→インフレ期待→総需要・総供給の変化、、という経路をあえて軽く書いている。 これは自民党の財政出動政策への配慮でしょう。 なぜなら、今や通貨供給量(通貨価値の調整)が、景気変動に最も大きく効く、というのが国際的コンセンサスだからです。 だから、先進国では不況になっても、日本のような財政出動ガンガン路線はあまりやらない(日本向けには財政出動もいいよ、とはめ込みアドバイスをしますが、、、)。