秋子の退職(14) 24年10月8日(月)9時37分

堅実さん

 しかし、その日の夜は、秋子は上機嫌で帰ってきた。聞いてはいないが、どうやら「辞める」とは言っていないらしい。

 

事実は分からないが、数日後になって、明彦は、こう考えた。秋子には、秋子の考えがある。そう決めたのなら、それもそれで、仕方ないだろうと考えるようになった。

 

しかし、今の世の中です。不景気、リストラの嵐、就職難、不安定な職場、ニート、そしてワーキングプワーと呼ばれる低賃金、こんな世の中で、秋子は、どうしようというのだ。辞めたら次の仕事が無い。有ったとしても、今の会社よりは条件が悪くなるのは目に見えている。転職する毎に条件が悪くなる。こう考えるとまた、ため息が出てくる。残るも地獄、行くも地獄か。

 

もう、なるようにしかならない。しかし、なるようにしかならない中でも、何とかしようとするのも、これまた、人ではないか。この事が、人が人であることの証拠みたいなものではないか。世の中が悪いと言っても、いくら努力しても駄目だと言っても、それでおしまいなら、本当にそれで、その人はおしまいになるのである。それでいいのか。

 

今、生きている。それならば、どうなるかは分からずとも、何とか粘ってみようではないか。そうすれば、その先はどうなるか分からない。しかし、結果はどうあれ、そこで何とかもがいてみるのも、生きたいなら、何とかしようと思うなら、必要ではないか。何度か挑戦すれば、生きる道は見つかるのではないか。世間で言う様に、社会が閉塞状態の中でも、人の生きる道は見つかるのではないか。

 

 

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