とんで昨日('12/8/26)別の元同僚・M.さんと話を交わす機会があり,I.さんについてさらに詳しくその経緯を聞くことができた。
さて「さらに詳しく」と書いたが,I.さんが亡くなったときに同僚であった,そして同性で比較的近しい関係にあったM.さんが,I.さんの病状や逝去した前後の状況について実に漠としてしか知っていないことに驚いた。職場で殊更 M.さんだけが知らない,というのではなく,上司・同僚誰もが事情をつまびらかには知らないのである。
勤められるだけ勤めた挙げ句「ちょっと体調が悪いので」とだけ告げて職場を休み入院し,入院した事実は伏せたまま,程なくして亡くなった。そして同僚等は,すべて事後的に漠然と彼女の癌罹患のことなどを知ったというのである。
さらに驚くべきは,彼女は癌罹患の事実を最後の最後まで家族にも隠していたことである。よってご両親等でさえ彼女の病名を知ったのは,亡くなる直前だったというのである。
M.さん曰く「I.さんの性格がありますから……」。私もその見解に同意する。プライドの高さゆえ,自分の弱みの類は他者には知られたくない。おおよそその辺りで当たらずとも遠からずだろう。
では,なぜ家族にさえ隠したのか? これは彼女亡き今永遠の謎になったとさえ言えるのだが,可能性としては次の二つぐらいではないか。
1 家族に心配を掛けたくなかった
2 家族との関係が悪化していた
当初私は1を推論したが,考えれば考えるほど整合性が取れない。いずれ分かることを先送りにしたところで,知らされたときの家族の衝撃や後悔の念も大きくなるばかりであることは明らかではないか。
2? それはあり得る話である。いつぞや「近親者で尊敬できる大人なんて1人も居ない」と彼女が呟くように言っていたことを思い出したからである。
ともあれ,癌にかかり余命わずかという事実を亡くなる直前まで誰にも告げ(られ)なかった彼女の孤独感の深淵に思いを馳せる時,深い溜息を禁じ得ない。