★「最新型ウイルスでがんを滅ぼす」
帯:対がん戦争の最終兵器 「全ての患者にとって希望の書」 鳥越俊太郎氏
藤堂具紀(どうどうともき)著 文春新書 880円+税 2012.8.20.第一刷
著者は東大理Ⅲを出た脳神経外科が専門の超秀才。
頭のイイの人の書く書籍は、とてもわかりやすい。
まるで自分が藤堂氏になったかのような、研究現場の臨場感も味わえる秀作。
ひょんなことから、藤堂氏は米国へ無給研究に向かった。
そこでの1年半に渡る無給研究の間に、師匠だった米国教授の発明したものを凌ぐ、
遺伝子改良した単純ヘルペスウイルスⅠ型:G47⊿(ジー47デルタ)を開発したのであった。
このウイルスは、癌細胞の中でだけひたすら増殖して、癌細胞を死滅させるという代物。
副作用もなく、今まで手術できず・放射線療法も効きにくく・抗癌剤もほとんど無効であった、
各種の致命的な癌に対しても効果がある可能性が高いという。
脳腫瘍の中でも最悪だという
グリオーマ(神経膠腫:しんけいこうしゅ)、現代の医療ではほぼ100%助からない。
その細胞を使用したインビトロ(試験管内)試験では、
U87MGヒトグリオーマ細胞が48時間で完全に死滅している。
(P.20写真)
もちろん試験管で上手くいったからといって、
人体で上手くいくかどうかが問題なのだが。
期待されているのは、脳・心臓・神経芽腫・肝臓・腎臓・膵臓など
骨髄腫や白血病を除いた(ヘルペスウイルスは元来、骨髄に影響を与えにくい性質があるため)、
広範囲なあらゆる腫瘍に対して。
ネックなのが、特許並びに開発費用だと。
特許権が米国にあり、アジア方面の特許をなんとか譲り受けることに成功したものの、
臨床開発する段になって人力・資金が足りず、
製薬企業の力を借りたいということであった。
厚労省など国から援助が出ているものの、
非常に苦しい状況だという。
また、米国においては、
いよいよ製薬企業(アムジェン社)がエントリーして開発に拍車がかかっている状況。
開発者である藤堂氏が、米国残留を蹴ってせっかく日本に帰ってきたのだから、
しかも東大がなんとか特許権の一部移譲に成功したのだから、
日本の製薬企業にも藤堂氏を応援してほしいものだ。
武田薬品とか、大正製薬とか、どーでっか???
これに喰いつかなくっちゃ、製薬企業じゃねーだろ~(笑)
★「医薬品クライシス ~78兆円市場の激震」
佐藤健太郎著 新潮新書 700円+税 2011.1.10.第八刷
ところでこの書籍には、
現在の医薬品企業における
とっても苦しい現状が赤裸々に語られている。
医薬品スクリーニング技術は「アホかいな」というくらい進化しているのに、
新薬がほとんどと言っていいほど、できないのであった。
だから、このG47⊿に喰いつかなくっちゃ、明日はないだろ~♪