財務省OB、榊原氏の近著。
内容は、財務省の弁護的な話と増税の正当性を訴えるもの。
しかし、財務省や増税にとって都合の良い数字だけを上げている等、真摯に書かれた本ではないです。
例えば、国家債務の莫大さだけ取り上げ、国家資産の莫大さは言ってないなど、高橋洋一氏の近著と併せ読むと、恣意的なところがもろに分かってしまう。
この本しか読んでないヒトならばともかく、高橋氏の本を読んだヒト、経済の時系列データを追っているヒトには矛盾点が目についてしまって、財務省はやっぱり危ない、と再認識させてしまうことでしょう。
また、日本の役所の規模は小さいという話も出しているが、経済上問題なのは、役人の数でなく、役所が扱う資金量であって、それがGDPの50%(特別会計+一般会計)にもなる日本は、やはり(経済的に見て)『大きすぎる政府』なのです。
政府経由の資金・権限が大きすぎ、まともに市場原理が働かないので、国全体として非効率になっているのでしょう、やはり。
この本の中では政治家の給与が高すぎる、ということも書かれてますが、政治家は役人のように安定した職業でなく、基本、実力主義の世界です。
政治家の給与を下げ、政治家の生活を不安定化させれば、利権に走らざるを得ない政治家が増え、資金を握っている財務省にますますコントロールされやすくなるでしょう。
真面目なふりで、あちこちに財務省の権力強化につながる提言が散りばめられてます、この本。
評点はマイナス10点(10点満点)。
(補足)政治家の給与が高すぎる、政治家は利権のごり押しばかりする、、、という話は自称、国益派の官僚が良くするところです。 しかし、彼らが政治家の利権ごり押しを断ってきたかと言うとそうではない。 むしろ、それを利用して政治家に恩を売り、コントロールしてきたフシもある。 実際には被害者でなく共犯者なのは、(利権ごり押しが明らかになるような)情報公開を真面目にやってないことから明白でないでしょうか? 情報公開をなし崩しにするお役所の姿勢は、お役所自体に後ろ暗いとこが沢山あればこそ、なのです。
(補足)本著の中では、官僚は黒子、裏方という点が強調されてますが、これは、これまでの官僚の行状を見る限り、『責任は政治家に取らせ、自分たち(官僚)はウラでやりたい放題やる』ということと同義です。 なぜなら、これまで、失政の責任を取った官僚はほとんど皆無ですから。