これまでジャンクフード(カロリーは高いが栄養価が低い食品)の代表のように言われてきたコーラ飲料に特定保健用食品(特保)が登場した。「食事の際に脂肪の吸収を抑える」のが特長だ。しかし、これを飲んだからといって余分に摂取した脂質がゼロになるわけではない。健康維持のためには、主食・主菜・副菜を基本にした食事のバランスが大事だ。(平沢裕子)
脂肪吸収抑える!?
特保は、健康が気になる人向けに開発された食品。コーラ飲料で初めて特保を取得した「キリン メッツ コーラ」(キリンビバレッジ)は、脂肪の多い食事をとりがちか、中性脂肪が気になる人が対象だ。
特長とする「脂肪の吸収を抑える」成分は、1本当たり5グラム入っている「難消化性デキストリン」。トウモロコシなどのでんぷんを酵素処理して作られる水溶性の食物繊維で、もともとは食事の欧米化などで不足しがちな食物繊維を補う目的で作られた食品素材だ。この成分が入った飲料には「十六茶プラス」(アサヒ飲料)や「健茶王すっきり烏龍(ウーロン)茶」(カルピス)などがある。十六茶も脂肪の多い食事をとりがちの人、健茶王は食後の血糖値が気になる人向きという。
キリンビバレッジによると、特保コーラのターゲットは「健康が気になる30、40代男性」。ただ、これまでの購入者の約15%が10、20代男女で、30、40代女性も3割近くいた。
脂肪の多い食事をとりがちの人なら年齢や体形に関係なく効果が期待できるのだろうか。
「キリン メッツ コーラ」が特保の特許を取得した根拠となった論文を読んだ群馬大学教育学部の高橋久仁子教授(食物学)は「この飲料で得られた『中性脂肪の上昇抑制』効果は、肥満かつ脂質異常症と診断されかねない平均年齢43歳の人を対象に、高脂肪食をとった場合のもの。肥満でも脂質異常症でもない若い人が、通常の食事をしながら飲んだときにも効果が期待できるかは分からない」と話す。
的確な情報提供を
特保の業界団体「日本健康・栄養食品協会」は、消費者が納得し特保の理解を深めてもらうため、商品を広告する際の自主基準を設定している。
自主基準によると、広告にデータを使用する場合、実験参加者の年齢や性別、BMI(体格指数=体重「キロ」を身長「メートル」の2乗で割った数値)、試験の概要を明記するよう求めている。しかし、こうした情報をウェブサイトなどでしっかりと出している商品はそれほど多くない。
消費生活コンサルタントの森田満樹さんは「特保は決められた使い方をすれば対象者によっては効果が期待できる場合もあり、事業者側が情報をきちんと出すことは大前提だ。消費者も『これさえ飲めば脂肪の多い食事でも大丈夫』など過剰な期待はせず、生活習慣を変えるきっかけづくりとして上手に利用してほしい」とアドバイスしている。