東電の私募債発行計画は、補償に応じながら経営を維持するための「総合特別事業計画」の認可を受けたもの。複数の関係者によると、東電と銀行団は、銀行側が融通を承諾済みの1兆700億円について、方法や金利などの条件交渉に入っている。無担保で融資に応じてきた銀行側は原発問題のリスクを私募債への切り替えで転嫁したい考えだ。
3700億円は7月に東電側に入金予定。実際は融資が私募債に証券化される。三井住友銀行、日本政策投資銀行、大手生保などの融資団は、2000億円を1年半で、残りを半年、5年、7年、10年の年限から選んで融通する。利率は円スワップレート+50-60bpと通常より大幅に高い水準で交渉中だ。東電はその後も順次、私募債を発行する計画という。
スタンダード&プアーズの柴田宏樹上席アナリストは現在「B+」としている東電債の格付けについて、「公募社債の返済に充てられる部分が減り、担保価値が薄まる可能性がある」と指摘。私募債の発行が具体化すれば「社債格付けへの影響を織り込まなければならない」とし、格下げを検討する可能性を示唆した。
東京電力広報の岡崎太一氏は、「金利条件や私募債の発行など借り入れ条件などの詳細は、当社の信用力を踏まえ金融機関と協議させていただく」と条件の詳細についてはコメントを控えた。一方で「引き続き低コストで資金供給をお願いしてまいりたい」と述べた。
東電の有価証券報告書などによると、3月末時点の長短借入金は3兆7178億円。社債は4兆3010億円発行している。