いよいよこの新聞小説も,佳境にはいり、終わりに近いと感ずる。一人の画家が、いろいろの全てを失っても、絵の世界で、より完成度の高い作品を求める物語である。
何と言っても、この表現力の強さには、何時も感心させられる。自分も文なるものを、今書いているが、とてもその能力が無いことを、思い知らされる。
絵描きという者には、そういうものが有るだろう。自分の求める宇宙とのつながる表現である。その、つながりは、なんだか、はっきりとは、分からないが、おそらく、究極の真理であろう。そしてその作品が、絵描きの限界となってもいる。
さらに、高きを求め、求めきれない高きを求め、苦悩する。これが絵描きの求めているものであろう。
さあ、最後はどうなるか。個人的には、等伯に最後の安らぎをもとめてやりたいが、さて作者の安部龍太郎氏はどう結末をつけるか。安らぎと共に、未完成であると、締めくくるような結末ではと、思うが。