自治体に5年で寄付287億円 電力会社、料金に転嫁
全国の電力会社や子会社、関連団体から地方自治体に提供された寄付や、寄付の色合いが濃い金品が、2011年度までの5年間に総額約287億円に上ることが1日、各自治体への取材や情報公開条例に基づく共同通信の開示請求で分かった。過去にもこうした寄付はあったとみられるが、電力会社側に公表義務はなく、総額はさらに増える可能性が高い。
寄付は電力会社などが事業を円滑に進めるための“潤滑油”として使われてきたが、大半は「発電の必要経費」として電気料金に転嫁。国は今後、転嫁しないよう電力会社を厳しくチェックする方針を打ち出している。
取材や開示請求は都道府県や県庁所在地などのほか、原発のある自治体やその周辺を含む60市町村が対象で、計約650件が判明。電柱の土地使用費などは除いた。
災害時の義援金も含めて1億円超の寄付は確認できただけで35件あり、うち原子力関連施設のある自治体や周辺自治体への寄付が30件。立地以外では、関西電力が大阪市に「市立科学館」の改装費2億5千万円を寄付したケースがあった。
最高額は東京電力が07年、柏崎刈羽原発のある新潟県柏崎市に贈った「柏崎・夢の森公園」で、施設費約32億円と維持費約18億円の計50億円相当(02~06年度には別に土地取得費などで約9億6千万円を寄付)。刈羽村にも40億円相当の現金や土地を寄付した。
福井県は京阪神と敦賀駅間を結ぶJR線直通化事業をめぐり、07~09年度に計13億3千万円を受け取った。寄付したのは、県内に原発を持つ関西電力、日本原子力発電とみられるが、県は「寄付者の意向」を理由に非公表としている。
静岡県は、中部電力浜岡原発1、2号機の廃止で国の交付金が減り、中部電に“穴埋め”を要求。09~11年度に計約16億3千万円を支出させた。
岐阜県は08年、中部電が水力発電所の建設から撤退した後も、周辺の県道工事などを進めるため中部電と協定を結び「負担金」として約18億9千万円を受け取った。
このほか中国電力分は、原発の建設計画がある山口県上関町に07年以降で計24億円があった。
東北電力女川原発があり役場が津波被害を受けた宮城県女川町、東電福島第1原発事故で役場が警戒区域内にあった各自治体は寄付の規模が不明だった。
原発などの立地自治体には国の電源立地地域対策交付金(電源3法交付金)が交付されている。
東電広報部は「当社としては教育、文化、スポーツ、社会福祉など公益企業の特性から広く地域振興に寄与するために寄付を行っている」と話している。