東京電力は27日、福島第1原発事故に伴う今後10年間の経営改革の具体策を示す「総合特別事業計画」を枝野幸男経済産業相に提出する。政府は7月にも公的資金1兆円による資本注入を行い、東電を実質的に国有化。新会長となる原子力損害賠償支援機構の下河辺和彦しもこうべ・かずひこ氏が直轄チームをつくり、改革に着手する。
計画は、政府の資本注入と民間金融機関からの新規融資1兆円を活用し、廃炉費用の増加などによる経営破綻を回避するのが最大の狙い。賠償費用を捻出するため、計画期間に3兆円を超す経費削減を進め、失墜した信頼の回復を目指す。
下河辺氏の改革チームは、内部昇格で選ぶ新社長や生え抜きの中堅社員、弁護士ら外部の専門家がメンバーとなる。縦割りの弊害が指摘される東電の事業部門全体に目配りし、利用者本位の見直しを徹底する。
外部の意見を取り入れるため、経営形態も社外取締役が過半数を占める米国型の「委員会設置会社」に移行し、原発事故の賠償や廃炉作業への監視を強める。
経費削減では、原発推進への謝礼などの意味合いで毎年数億円を拠出してきた自治体や研究施設への寄付金なども原則として廃止する。
収益を改善するため、家庭向け電気料金の10%値上げを7月から3年間実施する一方、柏崎刈羽原発(新潟県)を2013年度から順次再稼働させる。14年3月期決算で純損益の赤字を脱却する計画だ。
資本注入により政府が取得する議決権割合は、役員を選任できる過半数とし、必要に応じて3分の2以上に引き上げて経営権を完全に掌握できる仕組みにする。