民主党政権は、景気対策、デフレ脱却策として財政政策、特に公共投資を重視する姿勢を強めている。
しかし、グローバル経済の状況下では、先進国における公共投資は、それ自体、円高デフレ圧力となるのです(マンデルフレミング則)。
だから、公共投資は景気対策として行ってはいけない。
公共投資は、あくまで公共投資として、ホントに必要なものに絞り、『景気と関係なく』粛々と『効率的に』行っていくべきなのです。
そうでなければ、財政赤字が膨らむばかりで無駄な箱物が残った過去を繰り返すことになる。
そうでなければ、財政赤字が膨らみ、必要な公共投資も出来なくなってしまう。
そうでなければ、関連業界の経営(雇用も)は不安定化するし、国際競争力向上も抑制される。
グローバル経済下、先進国において、公共投資を景気対策として行って良いのは、大恐慌のような非常事態に限られます。
然るに、今はリーマンショック後ではあるが、日本はショックの震源地でない。
ショックの震源地たる米国では、公共投資を景気対策に使わずとも、金融政策だけで立ち直った(正確には中央政府は財政政策を行ったが、地方政府は財政緊縮を行い、財政全体として景気浮揚効果ゼロであった)。
ゆえに、今、日本が景気対策として公共投資を拡大する理由は全くない。 今、景気対策で公共投資拡大を行うのは、将来の公共投資の先食いになるだけ。
もちろん、震災復興の公共投資は必要です、、これは景気と無関係に(50年、100年の超長期の復興債によって)粛々と進めるべきものです。 しかし、震災復興にかこつけた無駄な公共投資には注意しなければいけない。 それでは、将来のホントに必要な公共投資が出来なくなっていくからです。
さて、景気対策用の財政政策には、公共投資のほか、減税やクーポン配布があります。
減税は、政府経由の公共投資と異なり、市場経由の消費を増やすので、利権・不正の温床にならないし、市場経由なので効率的(ほんとに必要なもの、需要のあるところにお金が流れる)。
減税は経済全体に占める官製経済の比率を下げるので、市場原理がより適正に働くようになり、潜在成長率を高めることにもなります。
反面、減税だけでは景気への即効性は乏しいので、金融緩和など金融政策と合わせ技で、人々のインフレ期待、景気回復期待を高める必要があります。
一方、クーポン配布は、即効性がある反面、潜在成長率を高める効果は乏しい。
また、やり方によっては利権の温床になります。
例えば、民主党政権が行っているエコポイント制度はクーポン配布の変形版ですが、利権の温床になっている。
制度を複雑化し、役所や外郭団体(天下り先)の仕事を増やしているからです。
これでは景気浮揚効果は減殺されてしまう。
まじめに制度設計して欲しいものです。
(補足) 日本で公共投資が利権・不正の温床になりがちだったり、非効率になったりするのは、推進する専門家ばかりで、チェックする側に専門家集団がいないからです。 情報公開が進んでも専門家がチェックしなければ誤魔化されて終わりになります。 土木事業もそうですが、原発事業などもその典型です(災害コスト、廃棄物処理コストを国に負わせるので実質、公共投資です)。 公共投資のみならず、日本の官庁の専門行政には悉くそういう問題がある。