【行政書士重要過去問】平成22年-問30 (民P194)

kenji296606さん
(問題)
A銀行はBに3000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。この場合に、以下のア~オの記述のうち、次の【考え方】に適合するものをすべて挙げた場合に、妥当なものの組合せはどれか。なお、対抗要件や即時取得については判例の見解に立つことを前提とする。

【考え方】:分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する。

ア、抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却された場合には、A銀行は第三者への木材の引渡しよりも先に抵当権の登記を備えているので、第三者の搬出行為の禁止を求めることができる。

イ、抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却され、占有改定による引渡しがなされたとしても、第三者のために即時取得は成立しない。

ウ、Bと取引関係にない第三者によって伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合に、A銀行は第三者に対して元の場所へ戻すように請求できる。

エ、Bによって伐採木材が抵当山林から別の場所に搬出された後に、第三者がBから木材を買い引渡しを受けた場合において、当該木材が抵当山林から搬出されたものであることを第三者が知っているときは、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できない。

オ、第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合において、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができない。

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(解答・解説)
抵当不動産から分離した付加一体物(動産)に対して抵当権の効力が及ぶか、及ぶとした場合の「抵当権者」と「分離物の第三取得者」の優劣についての考え方としては、本問の【考え方】である「分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する。」とするのが、多数説であり公示説と呼ばれる。

本問の【考え方】をまとめると
≪木材が売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれている≫
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【1】木材搬出前→抵当権の効力は及び、抵当権を第三者に対抗できる。

【2】木材搬出後→抵当権の効力は及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する。
となる。これを踏まえて、以下検討していく。
ア.適合する。
本肢の「山林上に伐採木材がある段階」から、【1】についてであることがわかる。そして、【1】の場合は、抵当権の効力が及び、抵当権を第三者に対抗できるのであるから、物権的請求権として、第三者の搬出行為の禁止を求めることができる。
したがって、本肢は、「本問の考え方」と適合する。

イ.適合する。
本問では、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行っているが、これは抵当権の侵害にあたるため(大判昭和7年4月20日)、Bは、本来当該木材について売却する権限のない者である。
もっとも、Bから木材を買い受けた第三者には、即時取得の成立の余地が残るが、この点、判例は占有改定による取得の即時取得の成立を否定している(最判昭和35年2月11日)。
また、即時取得の成立において、占有改定による引渡しでは足りないというのは、本問の考え方である「場所的一体性を保っている限り、公示の衣に包まれている」という理に沿うものである。
したがって、本肢は、「本問の考え方」と適合する。

ウ.適合する。
本肢は「別の場所に搬出」されているため、【2】のケースであるが、本肢の第三者は、取引関係がないのにもかかわらず不当に別の場所に搬出しているため、当該木材について無権利者であり、民法第177条にいう「第三者」にはあたらない(最判昭和25年12月19日)。
そうすると、本問の「考え方」に沿えば(【2】でも抵当権の効力は及ぶ)、物権的請求権として、元の場所へ戻すように請求できる。
したがって、本肢は、「本問の考え方」と適合する。

エ.適合しない。
本肢の「別の場所に搬出された後」から、【2】についてであることがわかる。そして、【2】の場合、第三者に対する対抗力は喪失し、また、対抗関係に立つ場合は第三者の善意・悪意は、原則として問われないため(大判明治45年6月1日)、本問の「考え方」に沿えば、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できる。
したがって、本肢は、「本問の考え方」と適合しない。

オ.適合する。
本肢は「別の場所に搬出」されているため、【2】のケースであるが、「個人的な嫌がらせ目的で、・・・木材を買い引渡しを受け」ているため、当該第三者は、背信的悪意者にあたる。
判例は、背信的悪意者は民法第177条にいう「第三者」に含まれないとしているため(最判昭和43年8月2日)、第三者に対抗することができるが、他方で、別の判例では、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めるには、適切な維持管理が期待できないなどの特別の事情が必要ともしているため(最判平成17年3月10日)、本問の「考え方」に沿えば、特別の事情がなければ自己への引渡しを求めることができない。
したがって、本肢は、「本問の考え方」と適合する。


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