(問題)
時効制度の存在理由については、次のような考え方の対立がある。
A説「時効とは、取得時効が成立した場合には無権利者であった者に権利を取得させ、消滅時効が成立した場合には真の権利者の権利を消滅させる制度である。」
B説「時効とは、真に権利を有する者または真に義務を負わない者が、長期間の経過によってそのことを証明できないことにより不利益を被ることのないよう救済するための制度である。」
時効の援用(民法145条)に関する次の説明のうち、最も妥当なものはどれか。
1.時効の援用は、時効の効果が道徳に反する面があるため、それによる利益を受けるかどうかを当事者の良心にゆだねたものであるとの説明は、A説と矛盾する。
2.時効の援用は、民事訴訟法上の弁論主義から求められるものであるとの説明は、B説と矛盾する。
3.時効の援用は、はじめに遡って権利の得喪の効果を生じさせるものであるとの説明は、A説と矛盾する。
4.時効の援用は、権利関係を証明するための法定証拠を提出する行為であるとの説明は、B説と矛盾しない。
5.時効の援用は、法定の停止条件であるとの説明は、A説と矛盾する。
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(解答・解説)
1.妥当でない。
実体法説(A説)を採った場合、時効の効果は、真の権利者の権利を喪失させ、真の義務者の義務を免れさせるということになり、道徳に反する面があるとの批判がある。
そこで、時効の援用は、それによる利益を受けるかどうかを当事者の良心にゆだねたものであるとの説明がされる。
したがって、A説とは矛盾しない。
2.妥当でない。
弁論主義とは、裁判に必要な事実に関する資料の収集・提出を当事者の権能及び責任とする原則のことである。
この点、訴訟法説(B説)では、時効の援用は、時効期間経過による権利の得喪という新たな法律関係を証明するための法定証拠として裁判所へ提出する行為と説明される。
つまり、弁論主義と訴訟法説(B説)における時効援用の考え方は、親和的な関係にある。
したがって、B説と矛盾しない。
なお、実体法説(A説)の確定効果説では、「時効の援用=訴訟法上の攻撃防御方法の提出」と捉えるため、当該説とも矛盾しない。
3.妥当でない。
時効の援用の効果が生じる時期については、A説を採るか、B説を採るかに、直接関係することではなく、どちらの立場からも、はじめに遡って権利の得喪の効果を生じさせるものであると説明することができる(民法第144条参照)。
したがって、A説と矛盾しない。
4.妥当である。
時効の援用は、権利関係を証明するための法定証拠を提出する行為であるとの説明は、B説と矛盾しない(肢2下線部参照)。
5.妥当でない。
実体法説(A説)(→不確定効果説→停止条件説)では、権利の得喪は、時間の経過では確定的に生じず、時効の援用によって発生するという構成を停止条件(法律行為の効力の発生を将来の不確実な事実にかからしめて停止させること)と同様に捉える。
したがって、A説とは矛盾しない。
A説(実体法説)
この説は、時効とは、取得時効が成立した場合には無権利者であった者に権利を取得させ、消滅時効が成立した場合には真の権利者の権利を消滅させる制度、すなわち、時効を実体法上の権利得喪原因とする考え方である。
なお、実体法説は、時効期間の完了によって、時効の効果が確定するか否かで確定効果説、不確定効果説に分れ、不確定効果説からは停止条件説と解除条件説に分かれる。
B説(訴訟法説)
この説は、時効とは、真に権利を有する者または真に義務を負わない者が、長期間の経過によってそのことを証明できないことにより不利益を被ることのないよう救済するための制度、すなわち、時効の効果を訟法上の法定証拠(債権証書や証言に優越する証拠価値を与えるもの)にあるとする考え方である。
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