オバマ米大統領の肝煎りで始まった核安全保障サミットが課題に直面している。
「核物質管理の徹底」
をうたってはいるが、参加国への強制力はなく、具体的な成果も見えにくい。
「核兵器なき世界」
の理想も北朝鮮やイランが突きつける現実を前にかすみがちで、核安保の専門家はサミットが「オバマ・ブランド」を捨て、各国が「より積極的に動かなければ、サミットの存在意義が問われかねない」と危機感を強めている。
オバマ大統領は27日、メドベージェフ露大統領、ナザルバエフ・カザフスタン大統領とともにカザフスタンにある旧ソ連核実験場の核物質除去がまもなく完了すると発表し、核安保に関する「進展の具体例」と称賛した。
26日の演説では、5月に訪米するロシアのプーチン次期大統領に戦術核の削減交渉を提案する考えを表明し、中国にも軍縮交渉への参加を求めるなど、核削減の先導役ぶりをアピールしている。
オバマ大統領は「核兵器なき世界」を掲げ、「核兵器を使用した唯一の国」として「行動する責任と道義的義務」があると強調。
核安保サミットを提唱し、ワシントンでの第1回会合では、核兵器の原料となる高濃縮ウランなどの核物資管理を「4年以内に徹底」することで合意した。
だが、核安保の取り組みは各国の自由意思に委ねられている。
核安全保障の専門家ケン・ルオンゴ氏は「拘束力があり、包括的な基準となる制度を構築しなければならない」と訴えるが、義務が生じる“改革”に各国は及び腰だという。
旗振り役となってきた米国も財政難のあおりを受け、勢いには陰りが見える。
世界の核物質管理を手助けするための予算は3200万ドル(約26億円)の削減が決まっている。
イランや北朝鮮の「核の脅威」よりも「核物質管理」を優先するサミットを現実感に乏しい「核なき世界のマジックショー」(ボルトン元米国連大使)と揶揄(やゆ)する声もある。
2014年の次回サミットはオランダで開催される。欧州でのサミット開催で、分担の裾野を広げたいとの意向も透けてみえる。
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