写真を撮影した後でピントを調整できる画期的なカメラ「Lytro」が前週、いよいよ発売された。
望遠鏡を思わせる形状の「Lytro」は、「ライトフィールド」という技術を用いており、写真撮影後のデジタル画像パソコンPC画面上でクリックするだけでピント位置を自在にずらせる。
たとえば手前の被写体に合っていた焦点を、後景の物体に合わせ直すことも可能だ。開発したLytro社(本社:カリフォルニア州マウンテンビュー)は、この機能を「すぐ撮影、ピント合わせは後で」と紹介する。
このカメラを生みだしたのは、米スタンフォード大学(Stanford University)でコンピューター・サイエンスの博士課程在学中にカメラ製作を始めたレン・ン(Ren Ng)同社最高経営責任者(CEO)。
マレーシア出身でオーストラリア育った同CEOは、Lytroで撮影された写真について、後から手を加えられるその特徴から「生きた写真(living pictures)」と呼ぶ。
価格は、写真750枚を保存できる16ギガバイト(GB)モデルが499ドル(約4万1000円)、350枚保存可能な8GBモデルは399ドル(約3万3000円)。
いずれもポケットに収まるサイズだ。
■「驚き」「革命」―レビューは軒並み高評価
Lytro発売を受け1日、米メディアには新技術を高く評価するレビューが並んだ。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal、WSJ)のウォルト・モスバーグ(Walt Mossberg)氏は「一般向けコンパクトカメラの再発明だ。
調整やモデルチェンジではなく、1から10まで再考されている。
一般向け写真撮影の革命だと思う」と絶賛した。
一方で、Lytroで撮影した画像は現時点では米アップル(Apple)のマッキントッシュ(Macintosh、Mac)PC用の専用ソフトでしか取り込むことができないとも指摘。
画像ファイルが大きいため、取り込みに時間がかかる点に注意を促した。Lytro社は、ウィンドウズ(Windows)OS(基本ソフト)搭載PC用のソフト開発を約束している。
米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)のサム・グロバート(Sam Grobart)氏は、Lytroのピント再調整機能について「驚くべき」「かなりびっくり」な機能だと評した。「ピントを再調整してみた際は、まるで映画に登場する米中央情報局(CIA)要員になった気分だった。
衛星写真を見つめ、テロリスト『ジャッカル』に焦点が合うまで画像の『精細化』を技術者に頼む、そんなかんじだ」
その上でグロバート氏は、Lytroにピント調整機能以外の画像加工処理機能が一切ないことを欠点として上げ、「ライトフィールド技術が(スマートフォンに使えるような)もっと用途の広く安価なものに仕上がれば、大変革をもたらすだろう」と評価した。
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