私の投資法は、「配当金で生活」し、「生涯投資」をすることです。年代別には、40歳までに、「貯め」60歳までに、「増やし」60歳からは、配当金で「遊ぶ」ことを目標にします。
問題は、40から60歳までの間に、1,000万円を5,000万円に増やすことです。この期間は、収入もリスク許容度も人生で最も高い時期に当たりますが、一方で、仕事に追われ、子育て、マイホームと支出も多く、金も時間も余裕がありません。人生でもっとも大変な時期ですが、生涯投資法はここに焦点をあて、その可能性に賭けます。
20年間で資産を5倍です。年8.5%の利益が20年続けば、複利で5,000万円になります。新興国の国債で年率10%に回るものもあるし、毎年10%以上利益を上げているヘッジファンドも多いことから、簡単のようにも見えます。でも、毎年変わらずに、20年間続けることができるのでしょうか。
日本での代表的な長期利殖手段を見てみましょう。株価はここ20年間でほぼ半値、土地も6大都市の住宅地指数で42%まで低下しています。一方、定期預金は、92年ころの高利回りを考慮して2倍に、人気の金はこの間に2.9倍になっています。金投資がもっとも有利でしたが、5倍になっているものはありません。
このように、20年間で5倍は、想像しているよりもはるかに難しそうです。問題は、これから先の20年間をどう見るかによって変わってきます。この先20年間、政治、経済、社会が、現状のままと見れば、どのような方法を選んでも、目標の達成は無理かもしれません。
日本の物価は、過去20年間の消費者物価指数で見る限り、ほとんど変わっていません。デフレだといわれていたのですが、実態は指数が上がらない状態だったのです。私は今後20年間、最も変わるのが物価と考えます。少子高齢化が進展する中、購買力の伴わない物価上昇が起こる可能性はあります。そのとき、資産はリスクオンに向かいます。
それでは、なぜ金投資ではなくて日本株なのでしょうか。元本の増加が期待できて、配当がえられるというのは、株と不動産以外にはありません。株の場合には換金性が高く、所持コストも掛からない上に、税制や景気刺激などで政府が関わってきます。
以上から、日本株投資でこの難問に取り組むのが、最良と判断しました。生涯株式投資法では、20年間に4~5回ある相場のサイクルを捕まえて、資産を増やしてゆきます。1サイクルは、底値期、上昇期、天井期、下降期で構成されますが、この変動をひとつひとつ確実に乗り越えて行けば、次の展開が開けます。20年間に1回ぐらいは、バブルと呼ばれるような大きな波もあるかもしれません。
底値期で10銘柄程度を選定し、ポートフォリオを組み、上昇期から天井期では、利益確定と追加購入で資産を増やし、下降期では損切り銘柄と株価下落を最小限に抑え、投資資金が1サイクル終了後でも、出発点から1.5倍を割り込まない程度に保ちます。この過程で銘柄数は減少しますが、銘柄の入れ替えで配当金は増加します。これを4回から5回繰り返すことにより、20年間で5倍の目標が達成できます。
最も重要なことは、長期波動を読み、その上に立って銘柄の選定と売買のタイミングを計ることにあります。ポートフォリオの組み方、売りの時期、ファンドの設立と評価といった具体的な運用方法については、それぞれの項をご覧ください。
最後にもう一度、「貯める」「増やす」「遊ぶ」の意義です。
40歳までに「貯める」のは、意志の力さえあればできないことではありません。40歳から「増やす」ことは、意志の力、努力だけでは達成できません。必要なのは決断です。大過なく定年を迎え、年金と退職金で余命を気にしながら送るのがいいのか、蓄えたお金にリスクを取らせて、老後は配当金で「遊ぶ」のがいいのか、を選ぶ決断です。
リスクを取るといっても、チャート理論を勉強し、毎日モニター画面で株価の動きを監視する必要はまったくありません。むしろ株のことは忘れて、仕事に子育てに生きがいを感じ、悔いのない仕事をして、楽しい家庭を作ればいいのです。
仕事を通じて習得した社会、経済の動きに関心を持ち、知識を「増やし」ます。その知識から、株式相場の大きな流れを掴み、人との接触で企業の業績の動向などを体得することです。経済に関心を持つのは、仕事の面でも有意義になります。
やることといえば、大きな流れのなかで、①底値圏でテーマ業種を想定し、②業績の向上が期待できる5~10銘柄程度を購入し③ポートフォリオを組み、④年4回の4半期決算発表時に持ち株の業績動向をチェックし、⑤大きく値上がりしたものを売り、⑥持ち株を買い足してゆき、⑦業績の悪化した株を損切りする、これだけです。
株価の動きは週一度のチェックで十分。売買記録を忘れずに付けることです。新聞、テレビのニュースを見るだけで、投資情報誌など見る必要はありません。業務にはほとんど影響なく、安心して仕事に専念できます。
リスクとリターンは表裏一体のものです。生涯投資法といっても、生活環境によってリスクを取れる時期が変わってきます。投資法もそれに合わせなければなりません。私の投資法は、「増やす」時期に合わせていますが、基本はひとつ、長期投資を続けることです。目標達成後は、ゆっくりとした時間のなかで、儲けた、損したという株式ゲームに興ずればいいのです。
株は人生です。「貯める」「増やす」「遊ぶ」のサイクルのなかで、楽しい夢のある人生を送りましょう。間違えて「遊ぶ」サイクルからこの道に入ると、一生、株貧乏から抜けられなくなります。
長い間、ご覧いただき、ありがとうございました。