経済政策の戦略目標が、潜在成長率向上だとすると、そのための基本戦術は何でしょうか?
それは経済資源(=資金、人材)の最適配分です。
資金、人材が必要に応じて過不足なく配分されることで、無駄金、無駄働きは減り、生産性向上や技術革新(イノベーション)が生まれやすくなるからです。
成長率向上に最も効くのは、全要素生産性(技術革新等を含む生産性)ですから、経済資源の最適配分こそ、潜在成長率向上のための基本戦術なのです。
成長率向上に効く要因としては、人口もありますが、この影響は実のところ、かなり小さい(東大教授、吉川洋さん等の研究に詳しい)。
生産性を向上させずに人口だけ増やすと、一人当たりの豊かさが減り、社会的軋轢が増し、混乱が起きて却って経済成長低迷になります。
生産性向上を上回るペースの人口増大でも同じことが起きます(中国やインド、中東など旧世界の歴史はこの繰り返しです)。
では、経済資源の最適配分のためには何が必要か?
それは市場原理の適正活用です。
市場原理とは、『より良い製品、サービスにより高い値段が付く』という当たり前の原理(公正原理)です。
より良い製品、サービスにより高い値段が付く=より豊かになれるからこそ、それに応じて、そこに人材や資金が集まることになる。
つまり、最適配分が自然と成されるようになるのです。
しかし、市場原理が政策的に歪められるとそうはならない。
変な規制や保護や談合が横行すると、そうはならないのです。
産業保護と称して、割高製品、割高サービスを保護したり、そのために新規参入規制の網をかけたり、談合を黙認したりするとそうはならないのです。
こうなると、割高製品、粗悪サービスの業界、企業に、割高・粗悪のまま、多くの人材、資金が張り付くようになる。
最適配分も技術革新も起きにくくなります。
で、こういう状態は永続きしませんから、一時的に利益を維持出来ても、中長期的には破綻して、利益を大きく損なうことになるのです。
また、こういう不公正の蔓延は、社会全体に労働意欲の減退を引き起こします(これも生産性向上、技術革新にマイナス)。
つまり、経済資源の最適配分には、市場原理(公正原理)の活用が必須なのです。 規制、保護、談合の排除が必須なのです。
規制、保護、談合を廃し、競争条件、報酬条件を公正化することで、より良い製品、サービスや新たな製品、サービスの提供を競い合う『社会貢献競争』=経済競争が活性化し、人々の暮らしは豊かになっていくのです(経済競争による社会貢献は、適正報酬とリンクしているので、無償のボランテイアよりも持続性が高く、より効率的で、より強固な社会貢献です)。
ちなみに、民主党政権はこの点でも誤りを犯してます。
それは、市場原理ケシカラン、経済競争ケシカランの悪平等路線(怠けても働いても平等に配分)だからです。
格差是正と言いつつ、労働格差は無視して、所得格差の穴埋めだけしているからです。
これでは、最適配分も生産性向上も望めない。
誰も真面目に働かなくなる。
社会貢献するヒトが減り、社会貢献を受けるヒトばかり増える。
低成長が固定化する。
で、低成長なのに、人口増大は促進すると言っているのですから、(人口一人当たりの富が減っていくので)これは社会の軋轢増大、混乱、破壊への道です。