年間の自殺者が１４年連続で３万人を上回った。
国は平成１８年に自殺対策基本法を施行し、内閣府だけで毎年１００億円以上を投じて対策を講じているが、成果は上がっていない。
こうした中、昨年、民間主体で発足した「自殺防止国民運動本部」は、自殺防止の映画「大震災の超克（ちょうこく）・生命（いのち）の輝き」を製作。「鬱病などの薬では悩みの原因は取り除けない」と、人と人との結びつきと具体的な支援で自殺を防ごうと取り組んでいる。（村島有紀）
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◆映画製作し啓発
自殺防止国民運動本部は、中小企業経営者や個人経営者らの借金苦を助け、再起を目指すＮＰＯ法人「再チャレンジ東京」（東京都新宿区）が母体。映画は、１６歳のときに父親を自殺で亡くしたギタリスト、高谷秀司さん（５５）が総合プロデュースを担当した。
水産加工業がうまくいかず借金を背負った男性が鬱病になり、息子の協力で再起を果たした直後に震災に遭い、家族や家など全てを失い、生きる気力を失いながらもボランティアとの関わりで大事なものを思い出すというストーリーだ。
東京都の石原慎太郎知事や、筋萎縮性側索（そくさく）硬化症で療養中の徳田虎雄・医療法人徳洲会理事長、清水洋・事業再生研究会会長らがメッセージを寄せている。
原因を除こう
映画の中には「精神科の治療だけでは自殺は防げない」というメッセージが込められる。
同本部の平林朋紀事務局長は「自殺対策基本法施行後、５年間で医療機関の受診者と抗鬱剤など向精神薬市場は増えたが、自殺者の数は減っていない」と指摘する。
そのため、同本部は１月２７日、（１）個人個人の状況に応じた適切な支援体制の構築（２）事業生成型の法律運用について普及啓発（３）安易に精神疾患とする根拠の乏しい診断と、ずさんな医療の規制－の提言を公表。借金苦には借金の整理方法、失業には仕事の紹介など具体的な対策を取るよう厚生労働省などに求める。
平林事務局長は「現在の支援体制は個々人の悩みが全て『精神的な問題』にすり替わり、医療につなげられている。
重要なのは薬で悩みをごまかすことではなく、悩みの原因そのものを解決することだ」と話している。
映画とメッセージを収録したＤＶＤは希望者に無料で配布（送料要負担）。
問い合わせは同本部フリーコール０１２０・７８３０・６８。無料相談も受け付けている。
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早期受診の効果不明
警察庁の「平成２２年中における自殺の概要資料」によると、自殺の７割が男性。年代別では５０代が１８．８％で、６０代（１８．６％）、４０代（１６．３％）、３０代（１４．５％）と続く。
原因は「健康問題」がトップで４８％（「鬱病」含む）。
次いで「経済・生活問題」（２２％）、「家庭問題」（１３％）、「勤務問題」（８％）など。
ＮＰＯ法人「ライフリンク」（東京都千代田区）などが自死遺族から聞き取りまとめた「自殺実態白書２００８」によると、自殺の要因は「過労」や「職場の人間関係」「失業」「家族の不和」「鬱病」など、平均４つの要因が複合的にからみあいながら起きているという。
きっかけは、社会経済的な問題であることが多い。
国は鬱病と自殺には密接な関係があるとして２２年から、２週間以上不眠が続いたら精神科の早期受診を呼びかける「睡眠キャンペーン」を全国的に実施している。
しかし、全国に先駆けて１９年から同キャンペーンを実施し、精神科の早期受診を勧めてきた静岡県では自殺者は１９年の８０４人に対して２２年は８５４人で、効果は確認されていない。
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