神戸市三宮
昨晩,「『坂の上の坂』刊行記念 藤原和博さん講演会 in 神戸」を聴いた。
300人ほどが入れる会場は満員。彼が都内初の民間人校長を務めた杉並区立和田中学校での諸改革は100回以上TV報道されたというから,彼の名前をご存じの方もおいでになるだろう。
さて同著そして講演会の主旨を,私なりにざっくりまとめてみる。
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平均寿命が伸びたこれからの社会では,会社員としての前半生だけでなく,後半生にもすべきことを複数持ち上り調子に生きていけるよう,必要な資質(情報編集力,ネットワーク脳,自分プレゼン術など)を培っておこう。
秋山好古の享年は70歳であるが,真之 49歳,児玉源太郎 53歳,夏目漱石 48歳という,今からすればごく短命だったのが『坂の上の雲』の時代。今後は一つの坂(例 会社員としてのキャリア)が終わった先に,また一つ以上の坂が待ち構えているのが現代である。その坂をさらに上り調子に昇っていくのか,はたまた落ちぶれていくのか。
後半生にすべきことを複数持つことについては,フィギュア・スケートをイメージすると良い。右脚で滑っていく間に左脚を準備しつつ,左脚を氷上に下ろしてから緩やかに右脚を離す。ある段階の途中から次段階の準備を始め,スムーズに移行できるようにする。
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なおこうした話は,五十路の声を聞き始めた方ばかりではなく,20歳代や30歳代などの若い方たちについても有効だろう。定年退職後あるいは子育て終了後の長い人生に,何をしたいか何ができるかは,個々人の意欲や資質・能力に大きく左右され,それらは一朝一夕に準備できるものではないからである。「持ち駒」が一つだけ,例えば自分を特徴付けられるものが会社員としてのキャリアしかないという人は,退職とともにそれを失い時間を持て余し鬱々と毎日を過ごすことになる確率が高まるのは当然である。
私が前職に勤務した最後の2年数ヶ月,毎朝2時間前後場帳を付けたり株式投資の勉強,そして週末の多くをセミナーに費やした。「こんな生活,いつまでも続けられるものではないだろう」と心のどこかで思いながら,程なく実際にそうなった。株式投資を「夜の仕事」と称していた時期があったのは,結果的には望ましいことだったのだろう,と今さらながらに思う。
適性や資質なんてやってみないことにはその有無なんて分からないのだから,自分自身を主観のみで,たかだか数十年の短い半生での経験で狭く規定してしまわない。機会を見つけては,あるいは様々な人と交流し,資質の向上や人としての幅を少しでも広くするよう心がける方は,そうでない方に比し,数十年先に行き着く先は随分異なっているに違いない。
A mind is like a parachute. It doesn't work if it is no open.
-- Frank Zappa
心はパラシュートに似ている。開かれていないと役立たない。