母親と娘の究極の関係を追求
新人女性作家のデビュー作で、日本を含めた世界39カ国で出版が決定し、昨年8月に母国アメリカで刊行されるとまもなく、20世紀フォックス社が映画化オプション権を取得したという話題騒然のベストセラー作品である。
物語の舞台は、現代の米国サンフランシスコ。生まれてすぐ親に捨てられて孤児となった少女ヴィクトリアは施設に収容される。ときに里親がみつかって引き取られても、長くは続かず施設に送り返されてくる。愛することも愛されることも知らず、だれに対しても心を閉ざしきったままの彼女がただひとつ信じたものは、9歳のときの里親で、ようやく心を開きかけたと思われた相手エリザベスが教えてくれた花言葉だった。
ヴィクトリアが9歳のときに起きた運命的な出来事と、18歳になって施設を卒業し、ひとりで生きる術(すべ)を探らなければならなくなった現在の姿を交互に語りながら、母親と娘の究極の関係を追求していく著者の筆先はときに鋭く、ときに温かく、ときに容赦がない。
著者はサンフランシスコ生まれで、カリフォルニア州で育つ。スタンフォード大学で創作と教育学を学んだ後、低所得者層の若者を対象に文学と創作を教える。現在は夫、養子1人を含む3人の子供たちとともにマサチューセッツ州ケンブリッジで暮らしている。また、里親制度のもとで育つ子供たちの将来の自立を支援するために「カメリア・ネットワーク」なるプロジェクトを発足し、全国規模の運動を起こそうと試みているそうだ。カメリアとは日本でいうツバキで、花言葉は「わたしの運命はあなたの手の中に」だと、本書の巻末にある「ヴィクトリアの花言葉事典」が教えている。読後には一杯の熱いカモミール茶がよく似合う、深い感動をもたらしてくれる一冊だ。