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欧州国債格下げ
先週末、ついにS&Pにより欧州各国の格下げが発表されました。フランス、オーストリアが一段階の引き下げを受けて最上級の格付けを失ったこと、債務不安が特に大きスペインとイタリアの格付けが2段階引き下げられたことでしょう。キプロスとポルトガルはそれぞれBB+とBBの投機的格付けに落ちています。
格下げは確かに大きな材料たり得ますが、S&Pからは欧州各国の格下げ方向での見直しと、その発表が1月になることはすでに発表されていましたので、その意味で言えば株式市場はあらかじめ格下げの影響を織り込んでいたと考えることができそうです。実際、発表前後の時間に取引されていたアメリカの指数先物市場は発表を受けて一時的に大きく下げたものの、その後かなり値を戻して引けました。むしろ、直近の株式市場は格下げに対しておびえながらの推移が続いていたとも言えますので、もしかしたらこれを機に上昇方向への動きが出てくるかも知れません。
ただ、日経平均は下落方向へのトレンドのただなかにあり、おそらくは上昇しても一時的な反発にとどまる可能性が高いでしょう。何より、株式市場は織り込み済みだったとは言えど格下げという事実は変わらず、影響はこれからじわじわと広がっていくものと考えられます。特に、EFSFが提供できる資金量やそれ自体の格付けにも影響が出る可能性が懸念されます。EFSFはもともと調達コストが高くついてしまう信用力の低い国に対して資金提供するという枠組みですが、そもそもその資金はEFSFがどこかから借りてくる必要があります。このため、EFSFの信用力(AAA評価)が落ちてしまえば元も子もないのですが、EFSFの信用力の裏付けとなっているのはユーロ圏各国政府の保証です。もちろん、危ない国(ギリシアやポルトガル、スペイン、イタリアなど)の保証があっても意味はありませんから、実際問題としてEFSFの調達できる資金はAAAクラスの信用力を持つ国の保証枠まで、ということになります。
今回はこのAAAクラスの国のうち、フランスとオーストリアの格付けが下がっていますので、EFSFがAAA格を守るためには調達枠を縮小する必要があるのです。今までと同じだけの保証額を提供しようとすれば格付けが下げり、EFSF自体の資金調達コストが上がってしまいますので、そもそもこの枠組みの意味がなくなってしまいます。来年夏にESMが発足するまでの間にEFSFの枠組みが崩れてしまわないことを祈りましょう。
また、細かいところですが、今回の見直しでドイツとフランスに格差がついてしまいました。今後の報道の中ではドイツ国債とフランス国際の利回り格差が頻繁に取り上げられることになると思います。これが広がれば広がるほど市場にとっては悪い影響が出てきますので、気を付けておきましょう。
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