経済産業省のキャリア官僚が立場を悪用したとされる事件です。経産省の元審議官が内部情報をもとに大手半導体会社の株をインサイダー取引していた疑いが強まったとして、東京地検特捜部は12日、この元審議官を逮捕しました。
去年5月、資源エネルギー庁の次長として福島第一原発事故の賠償について国会で答弁した経済産業省の元審議官・木村雅昭容疑者(53)。救済計画に携わっていた企業の内部情報をもとにインサイダー取引をしていたとして、東京地検特捜部に12日、逮捕されました。
特捜部によると、木村容疑者は2009年、当時、経営危機に陥っていた半導体大手「エルピーダメモリ」社の公的支援に関する内部情報を知りながら、「エルピーダ」社の株を購入した疑いが持たれています。
救済された側である「エルピーダ」社の社長は、木村容疑者に不審な点は全くなかったと話します。
「(不審な点は)全くなかった。僕らは100%、木村さんを信じていたし」(エルピーダメモリ 坂本幸雄 社長)
当時、「エルピーダ」社は台湾の企業との提携を模索していましたが、木村容疑者は社長に同行し、台湾での協議にも参加していたということです。
「非常に堂々としていた。向こうの大臣を相手に日本ができること、できないことを明確に伝えていた」(エルピーダメモリ 坂本幸雄 社長)
また、木村容疑者は、別の半導体大手「NECエレクトロニクス」社についても、他社との事業統合の協議を開始するという内部情報をもとに、株を買い付けた疑いが持たれています。木村容疑者が、これらの取引で得た利益はあわせておよそ200万円とみられています。
2年前の事業仕分けでは、当時、行政刷新会議のメンバーだった枝野氏から容赦ない質問を浴びていた木村容疑者。その枝野氏は経済産業大臣として、12日、謝罪のコメントを出しました。
一方、木村容疑者の弁護士は、これまでのJNNの取材に対し、「取引は妻が行ったもの。また、情報はすでに公開されていたので、インサイダー取引にはあたらない」などとして、容疑を否認しています。
「経産省の重責を担う職員がインサイダー取引の容疑で逮捕される事態は、極めて遺憾なことだと考えています」(経産省 宮本 聡 政策評価審議官)
こうした事態を受け、経済産業省は会見を行い、職員の逮捕について謝罪した上で、処分について、捜査結果を踏まえて厳正に対処すると述べました。
また、今月中にも全職員8600人に対し、株取引に関する内部規則を遵守するという誓約書を提出させる方針を明らかにしました。(12日16:53)