かつて日本では「衣は一代、住は二代、食は三代」といわれたという。食、つまり味覚は長い時間をかけて変わるもの、とされたからだ。
「家庭料理」の崩壊がいわれて久しい。料理研究家の著者は「日本の豊かな食材を使うノウハウを失ってしまう」と危機感を持つ。そこで、自ら嫁いだ家に伝わる「三代の味」を写真、レシピとともに書籍化した。
昔ながらのお雑煮や七草がゆ、ちらし寿司(ずし)から、参鶏湯(サムゲタン)やビシソワーズなど“多国籍”な家庭料理もちらほら。ペラペラとめくるうちに、わが祖母や母の料理やなつかしい食卓の風景がオーバーラップする。そんな家庭料理への回帰こそ、この本の狙いかもしれない。