彫刻家、舟越桂(かつら)のアトリエはいつも素材である楠(くすのき)の香りがして、雑然とした中に静かな秩序が息づいている。壁のそこここには含蓄の深い手書きのメモが貼られ、訪問のたびに気になっていた。そのメモがまとめられ本になった。
いわく「アトリエは迷いの場所であり、迷うから道を探す」「歴史にやり残しはないのか?」「自分の中を見つめているような遠い目をしている人がときどきいる。もっとも遠いものとは自分なのかもしれない」等々。
不安を抱き、逡巡(しゅんじゅん)しながら、何とか美術史の中に自分の居場所を見つけようと苦闘する。かと思うと自分を鼓舞し、一方でしみじみと人間を省察する。家族への思いや好きな映画や画家のこと、旅先の街角で見かけた行きずりの人の印象などを綴(つづ)り、ときに哲学的な思索にふけったりもする。作品の題名候補を列挙したメモもある。
どれも彫刻家らしい物事を捉える感覚の鋭さ、的確さを感じさせ、生来の詩的な資質を物語る。本来、これらの言葉は他人に見せるものではない。言ってみれば、一種のつぶやきか。正直に自分を吐露した人間味あふれる言葉なので、これを読むと作家の内面に一歩近づいたような気にさせられる。
本書タイトルもメモから取ったもの。主語が「人類」ではなく「個人」なのがミソだろう。個の危うさ、あるいは人間の一回限りの生を言ったものか、考えさせる言葉だ。
本書には著者の彫刻作品やドローイングとともに、メモ自体の図版も収録されている。小さな紙片、メモ用紙、引きちぎった案内はがきなどに男性的な筆跡で書かれた文字。染みや紙ヤケも、一度書いて消した跡や書き加えたところもある。ときに走り描きのデッサンも交えた、これらメモ群はデジタルなツイッターとは似て非なる、体温の感じられるつぶやきだ。
これらは思考の断片であり、プロセスを示す。欲を言えば、ノミ跡もあらわな制作途中の作品や楠の削りカスが散在する、アトリエの空気感漂う造本だったらもっと良かったのに。
彫刻家・舟越桂の創作メモ 個人はみな絶滅危惧種という存在
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