「え!まだやるの。いい加減にしてよ」前回は、コストプッシュ・インフレの経済に与える影響とその効果を、政治との絡みから見てきました。今回は「経済と経済学」との関係です。
「うっそ!経済学なんてあるの」大学には経済学部があり、ノーベル賞にも経済学賞があるほどの立派な学問ですが、そういわれるほど最近の経済学は堕落しています。
経済学はケインズ以後、複雑な社会事象を計量化し、大量なデータを分析する計量経済学が、行き詰まった経済の新しい方向性を打ち出すのではないか、と期待したこともありました。ただノーベル賞を受賞した計量経済学者の理論ですら、それを使ったファンドが破綻してしまうのを見ると、まだ限界があることは明白です。
経済学のような社会問題を扱う学問では、自然科学のように新しい理論を、実験で検証することができません。理論が検証されないので何をいっても自由ですが、わけの分からない理論が続出します。実験で検証できない学問の限界は、こんなところにありそうです。
経済現象は、多様な人によって構成されています。ある国でうまくいった政策を、別の国でやって、そのとおりに動くか不明です。結局、現状をうまく説明するか、調子のいいことをいっている人たちが学会をリードするようになり、画期的な経済理論は出てきません。
その中で竹中平蔵氏は、郵政の民営化で小泉首相の理論的なバックボーンとなり、理論を実際の政治で実証したのですが、郵政の民営化が実現したところで政治家を辞めてしまいました。小さい政府と競争原理の導入、金融によるデフレの克服といった彼の主張は、社会実験未了のままです。とはいっても、経済学を先進国の社会で検証できた学者として、ノーベル賞の候補になる可能性のあるのは、彼くらいしか思い当たりません。
ところで、学者と呼ばれるには、大学教授の肩書きが必要のようです。でも大学側が教授を選ぶときには、研究成果は二の次で、経済界と政府に受けがよく、学生の就職活動に都合のよいことが条件のようです。こうして、論文を書くよりマスコミに出るほうを選ぶ教授が増えてきます。
「へぇ~こんな人が経済学部の教授。それだったら・・・」とばかりに、自称経済学者が町に溢れます。これら肩書きだけの教授が、マスコミで日本経済を論じているのをみると、教えている大学の学生が気の毒になってきます。「二番じゃだめなの!」といって有名になった政治家は、こんな教授から学んだのかもしれません。
経済学部を選んだ学生のほうも、有名教授のゼミに加わり就職への道筋をつけようとはしますが、経済学の勉強のほうはそっちのけで、就活や就職後に役立つ会計学、簿記、商法などに励むようになります。卒業生に経済学について質問しても、学者の名前を挙げるぐらいが関の山で、まともな答えが返ってこないのも無理ありません。
経済学で有名な大学といえば、東大、一橋大、慶応などが思い浮かびますが、東大は大蔵省、日銀などとの関係が深く、一橋大、慶応は、商社、証券、銀行といった民間のシンクタンクとの結びつきが強いようです。それだけに、大学での研究も、既得権益に都合のよいものになりがちで、「デフレに悩み、GDPの2倍もの借金を抱えた国が、どうやって経済を活性化し、国民所得を増大させるのか」その方策すら提言できない有様です。
政党に経済学者の支持がないのも問題です。政党の政策は、経済学を実証する場のはずですが、寄り合い世帯の民主党がどの経済学を指向しているのか不明です。今では、ほとんど省みられなくなっている左翼理論の支持者もいるようですが、表立ってこれをいう人はいません。マスコミに登場する民主党議員も、人によって都度主張が変わります。
民主党も政権与党として、はっきりした経済政策を掲げる必要があります。自民党は資本主義を掲げていましたが、新しくできた政党も、その経済政策のバックボーンをはっきりと国民に提示して、政治に関与してほしいものです。
冷静に現状を見てください。
デフレで得した人は誰ですか・・・。リスクを取らなかった富裕層、公務員、年金生活者、生活保護を受けている人???
デフレで損をした人は・・・。借金をした人。なかでも、膨大な借金を抱えている政府です。日本の富裕層は、負担を政府に負わせ、ぬくぬくとデフレを享受していたのではないでしょうか。ここまできて、まだ税金を上げるより国の借金を増やせというのは、あまりにも虫がよすぎます。
人口増と資源の枯渇が鮮明になると、世界の国々はいっそう資源の分配を主張するようになります。経済学が的確な回答を出せないと、民主主義が壁にぶつかっているように、資本主義もその限界を露呈して、軍事力を背景にした共産主義に逆戻りしかねません。そんな時、日本の富裕層は、何を信じ、どちらの方向に向かうのでしょうか。
長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。
「なに~、これで終わり?あまり役に立ってないよ」勝手にしろ!!!