【書評】『ヤクザと原発 福島第一潜入記』鈴木智彦著

AAI Fundさん
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究極の「ヨゴレ仕事」ルポ

 まずは、著者の鈴木さんが聞いた、ある暴力団組長の笑えないジョークをご紹介しましょう。

 「ヤクザもんは社会のヨゴレ、原発は放射性廃棄物というヨゴレを永遠に吐き続ける。似たもの同士なんだよ。俺たちは」

 確かに暴力団排除条例で追い詰められている暴力団にとって、究極の「ヨゴレ仕事」である原発ビジネスは魅力的な資金源です。

 ただ、両者の関係を裏付けることは簡単ではありません。ヤクザは現在進行形のシノギについては、極端に口が重くなるからです。

 暴力団専門ライター歴20年の著者だから聞けた彼らのホンネを紹介すると-。

 「原発はどでかいシノギ。電力会社と交渉して、ゼネコンと話付けて、地元の土建屋に仕事を振る。代紋なしではとても捌(さば)ききれん」

 「(原発の作業現場にも)ヤクザが多かったなぁ。刺青(いれずみ)…全然出してたね。指が欠けていても問題ないわ」

 著者がすごいのは、こうした周辺取材に飽き足らず、自ら作業員として、福島第一原発で働いたことです。担当は汚染水処理施設の設営など。着慣れぬ防護服とマスクに熱中症で昏倒(こんとう)したり、高濃度汚染区域でうっかり被曝(ひばく)したり…。

 命懸けの潜入取材の結果わかったのは、冷温停止に向けた突貫工事の杜撰(ずさん)さと作業員の健康管理、特に汚染度測定のいいかげんさ。

 こうした惨状を著者は、腕時計型カメラで撮影しました。その映像は外国特派員協会での講演や、ニコニコ動画でのインタビューの際に公開され、世界中で大きな反響を呼んでいます。
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