12/19、日経3面(経済面)記事より、、、
●日銀資産の対GDP比が34%と先進国中銀で突出してることを受けての、白川総裁談話『量的な意味での金融緩和が不足している、というのは事実に反する』、、、記事には『中銀資産の変化度合い』のグラフを併示。
→ このグラフを見ると、日銀資産の増加率が先進国で突出して”低い”ことが一目瞭然(概ね小泉時代を除き)。
日銀は明らかに金融緩和不足ですね。
デフレ持続、円高持続で空洞化が進むのも、当たり前です。
為替や物価に効くのは、通貨『量』ではなく、通貨『供給量』(変化度合い)なのです。
『量』が沢山あっても退蔵されてしまえば、物価も為替も動きません。
それが動き出すには、中銀が『供給量』を上げて、インフレ期待を起こさせねばダメなのです。
これはおそらく、商売をやっている人間ならば、感覚的に分かるイロハのイです(真逆の例ですが、サンマ豊漁でも倉庫にストックしまくれば価格は暴落しませんよね。市場にモノが出回らなくなっていくことで、不足期待が高まって価格つり上げとなります)。
この記事を書いた記者は、日銀総裁をあからさまにアホウだとは書いてませんが、何気に挟んだ図でそれを明確に示してしまっているのです(大丈夫だろうか、オイオイ(ーー;)。
●日銀幹部談話『金融政策が財政政策の領域に近づいている』に続けて、中銀の資産買い入れ拡大とその焦げ付きリスクに言及。 中銀の無制限買い入れを批判的に記述。
→ 無制限買い入れは危険なのでしょうか?
上記のインフレ期待の話と同様、中銀が、PIIGS国債(もしくはサブプライム債券とか)のような資産を無制限に買い入れる姿勢を示せば、PIIGS国債の暴落は止まり、金利(PIIGS諸国の返済利回り)は、景気中立的なニュートラルなものに戻るはずです。
無制限に買い入れる中銀に抗し、売り浴びせることは困難なのですから。
この場合、中銀は、安値から中立的な価格レンジで資産買い入れを行うことになるので、無制限買い入れをしても、焦げ付きリスクは小さい。
また、PIIGSへの負担は、不況のアンダーシュートでの過大な負担でなくなって、景気中立的な適正なものになります。
で、負担ゼロでなく、景気中立的な負担なので、無制限買い入れを実行したとて、PIIGS政府を甘やかすわけではないのです。
過剰な利払いに追われずに済むので、PIIGS政府は歳出削減を無理のない範囲に止められます。
歳出削減が苛烈でなくなるので、景気下押し圧力は弱まり、税収は上がります。
無制限買い入れにより、財政赤字削減への好循環が生まれやすくなるのです。
これにより、他の欧州諸国からPIIGS政府への財政援助の額も減らせます。
景気下押し圧力が弱まり、財政赤字削減が進みやすくなるので、PIIGS関連債権の不良債権化は抑えられます。 不良債権化が抑えられるので、PIIGS関連債権を保有している銀行の資産売却、貸し渋り行動も無くなっていく。
当然、中銀買い入れ資産の焦げ付きリスクは一層減ることになる。
で、中銀は、景気回復、好景気化とともに買い入れ資産を漸次売却していけば、中銀バランスシートは傷まず、資産のGDP比を適正水準に落として行くことが出来ます。
無制限買い入れでなく、中途半端な買い入れでは上記のような効果は期待出来ない。 市場の期待を高めるべく、中銀が無制限買い入れに近い姿勢を示すことが、PIIGS問題解決方法のポイントです。
これは、すなわち、不況時、価格アンダーシュート時の過大負担を、中銀を介して中立的適正負担に変換することで、不良債権の膨張を防ぐ、ということです(これが恐慌時のリフレ政策のポイント)。
さて、これに対し、中銀が買い入れ資産の焦げ付きを過度に恐れ、リフレ不足になるとどうなるでしょう?
デフレ傾向は止まらず、GDPは伸び悩み、中銀資産のGDP比は増大することになります。
買い入れ資産の焦げ付きリスクは却って高まることになる。
日銀資産のGDP比が、他国の中銀と比べて高いのも、日銀が十分な緩和政策をとってきたためでなく、緩和不足(リフレ不足)を長らく続けてきたためなのです。
●JPモルガン、チーフエコノミスト指摘、、『中銀が国債を無制限に直接引き受け、財政規律が損なわれるような連想が市場に広がれば、通貨の価値は維持出来なくなる』
→ 通貨の価値が維持出来なくなる=通貨安、はユーロにとっては朗報。 行き過ぎなければ必ずしも悪いことではないです。
また、前掲のように、無制限引き受けで景気中立的な適度な債務負担(利息支払い)になれば、『無理のない(適度な)歳出削減』で済むので、景気にマイナス負荷が過剰に掛からず税収も減らない。
これにより、財政黒字化が容易になるので、赤字垂れ流し=財政規律が一方的に損なわれる連想は働きにくくなるのです。
つまり、上記エコノミストの指摘は正しくない。 実際に起こることは全く逆なのです。
リーマンショック後の米国FRBの対応と、その後の景気回復ぶり(現在、欧州の悪影響で不透明感アップ中ですが、、)を見れば、これは一目瞭然です。
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まあ、要するにあれやこれやと、欧州ネタ、米国ネタを持ち出しつつ、通貨供給増大政策=円安政策=デフレ脱却政策、をけん制する記事になってしまっているわけです。
日銀が言うところの『伝統的』金融政策(=金利調整での金融政策)は、資本移動の自由化、グローバル化が進んだ現在ではあまり意味を持たず、『非伝統的』金融政策(=通貨供給量で物価調整・為替調整を行う金融政策)が今やスタンダードなのに、日銀だけ完全に周回遅れになっているのです。
近年では、更に進んで、資産価格やエキゾチック市場の動きを、金融政策に如何に取り込むかが焦点になってきているので、日銀は、2周くらい遅れていることになる。
日銀官僚(白川さん)を日銀総裁にしたのが、そもそもの誤り(民主党の意図的大失策)。
(補足)人民元安固定政策で、金融緩和ガンガンの中国に『隣接』している日本は、欧米以上に金融緩和ガンガンでなければいけない。さもなくば、中国に資本も技術も雇用も吸い取られ、出し殻国家になってしまうのです。