ビジネスマンに刺激的な言葉
チーム打率２割２分８厘、総得点４１９は、ともに今季１２球団で最下位。シーズン途中で解任通告を受けながら、そんな貧打を堅守でカバーし、中日ドラゴンズを球団史上初のリーグ連覇に導いた渦中の落合博満氏が常勝軍団の作り方を記した。ソフトバンクホークスと熱戦を演じた日本シリーズ開催中に初版５万１千部で発売され、すでに５刷２１万部。「ドラゴンズファンの多い中京圏に限らず全国で動きがいい」（ダイヤモンド社）という。
八回まで１人の走者も許さなかった山井大介を岩瀬仁紀に交代させた平成１９年の日本シリーズ第５戦での投手リレー、日本代表監督就任を固辞し、中日の選手も代表入りを辞退した第２回ワールド・ベースボール・クラシック（ＷＢＣ）…。賛否が渦巻いた采配の真相が当人の筆で明かされている。ただ前者は〈場面ごとに最善と思える決断を下した〉までだし、後者は〈チームを優勝させるために全力を尽くす〉という中日との契約を優先した結果だという。雑音に惑わされず、勝利のために最善を尽くす姿勢は徹底している。
とはいえ、そこはビジネス書。ベンチワークよりも、人材育成の原則を語った部分が読ませる。「オレ流」と称される落合氏だが、本書では〈すべては堂々たる模倣である〉と断言し、〈大切なのは誰が最初に行なったかではなく、誰がその方法で成功を収めたかだ〉と模倣のススメを説く。〈孤独に勝て〉〈向上心ではなく野心を〉〈達成不可能に思える目標を〉など、ほかにも刺激的な言葉が盛りだくさん。「組織内でもがき苦しむビジネスパーソンの背中を押すメッセージが多く、若い男性読者の共感を呼んでいる」と担当編集者の和田史子さん。自らの人生をどう采配するか。読後じっくり考えるのもいいかもしれない。
