国内の携帯電話市場で日本メーカーの劣勢が鮮明になっている。米アップルがスマートフォン(高機能携帯電話)の新製品「アイフォーン4S」を10月14日に投入し、ソフトバンクモバイルだけでなく、KDDI(au)も扱い始めたあおりを受けて、シェア低下に拍車がかかっている。日本メーカーもスマホへのシフトを急ぎ防戦に必死だが、他の海外有力メーカーも日本市場攻略に力を入れている上、通信会社の“援護”も望めない状況で、正念場はしばらく続きそうだ。
「予想以上に競争が激化している」
NECの遠藤信博社長はあきらめ顔でそう嘆く。子会社のNECカシオモバイルコミュニケーションズは、平成23年度の携帯出荷台数を従来の740万台から650万台に下方修正した。引き下げた90万台のうち3分の2がスマホで、遠藤社長は「アイフォーン4S発売の影響は否めない」と語る。
BCNの調査によると、アップルはアイフォーン4Sの発売以来、メーカー別シェアで首位を独走。発売直後の10月14日の週に73・5%に達したシェアは、ひと月以上たった11月14日の週も56・1%を維持した。
アップルが初代アイフォーンを発売し、スマホ時代の扉を開いたのが4年前。これに対し、日本メーカーは、製品が出そろったのが今年の夏商戦に入ってからと完全に出遅れた。日本メーカーが採用する米グーグルの基本ソフト(OS)を使った「アンドロイド端末」でも台湾HTCや韓国サムスン電子に先行を許している。
NTTドコモが、鳴り物入りで始めた次世代通信サービス「Xi(クロッシィ)」の最初の対応端末として、24日に販売した機種もサムスン製。ドコモの山田隆持社長はイベントで「スマホの中でも最高のスペック」と胸を張った。
日本勢が出遅れたのは、通信会社の要望に沿った製品をメーカーが納める日本独自の慣行がなお残るため、メーカーがスマホ開発にシフトしたくても、従来型携帯の開発をやめにくい事情がある。MM総研の横田英明取締役は「二重の開発負担がいっそう不利にさせている」と指摘する。
販売価格でも不利な戦いを強いられている。アイフォーンは、その圧倒的な販売量のため、通信事業者が多額の販売奨励金を乗せており、容量が16ギガ(1ギガは10億)バイトのモデルで5万円以上するところを、2年契約を結べば実質ゼロ円だ。通信会社には日本メーカーを優遇するほどの余裕はなく、端末価格は3万円程度と勝負にならない。
海外に進出し、「規模」を稼ぐことに生き残りをかけ日本勢だが、足元の国内市場を守ることすらおぼつかない。
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