冬が近づく中で、夏物家電を代表する扇風機の販売が異例の売り上げを記録している。エアコンなどで暖めた空気を扇風機で循環させて暖房効率を高める手法が、節電に有効として注目を集めているためだ。販売台数が前年同期比で10倍以上となった家電量販店もあり、節電需要で思わぬ“珍現象”が生じている。
「エアコンと扇風機を一緒に使えば約10%節電」
家電量販大手のエディオンが経営するミドリ中環東大阪店(大阪府東大阪市)では、こんな節電方法をアピールするチラシとともに、暖房器具売り場に扇風機がずらりと並ぶ。
エアコンで暖められた空気は天井付近にたまる。扇風機で風を送り、暖かい空気を循環させることで室内全体が暖められ、通常よりエアコンの設定温度を下げても暖かく過ごせる。同社によると約10%の節電効果があるという。
エディオンは冬場の扇風機販売に今年初めて踏み切った。エアコンとの併用をPRする作戦も奏功し、好調な売り上げという。「今年は夏も扇風機が好調だったが、冬も新たな魅力を開拓できた」(同社広報担当者)としている。
他の家電量販店でも、扇風機の販売台数は例年に比べ大幅に伸びている。
家電量販店「ケーズデンキ」などを展開するケーズホールディングス(HD)は、11月1~20日の販売台数が前年同期比で約5・5倍を記録。「扇風機を利用した冬の節電がテレビやネット、口コミで広がり、ブームになっている手応えを感じる」(同社広報担当者)という。
同様に上新電機では、エアコンだけでなく、石油ストーブなどの暖房器具と一緒に使う方法をアピールしており、1~20日までの扇風機の販売台数は同約12倍と記録的な伸びになった。
調査会社GfKジャパンによると、同月の第1、2週合計の扇風機の国内の家電量販店での販売台数は前年同期比約5・2倍。「節電の影響で、例年よりも売れている」(GfKジャパン)という。日本電機工業会も「夏の家電商品がここまで冬に売れるケースは異例」と驚きを隠せない。
第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストは「扇風機の使用用途の幅広さが注目され、販売の裾野が広がったとみられる。今後も家電商品を使った斬新な節電方法が次々と生まれる可能性がある」と指摘している。
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