交通安全の確保のため、新設と更新に力を入れてきた信号機について、警察庁は必要性が低くなったものについては「撤去」を検討するよう都道府県警に指示したことが20日、分かった。
財政難で、老朽化する全国約20万基の信号機の更新が進まず、このままでは信号機の半分を撤去せざるを得ない。
警察庁は更新に全力を挙げる一方、「メリハリのある信号機施策が必要」と撤去の検討という新方針を打ち出した。
警察庁によると、全国に設置されている信号機は20万1878基(平成23年3月末時点)。
経年劣化を考慮し、19年が経過したものを更新対象としている。
対象すべてを更新するには毎年、全体の5.3%を更新しなければならないが、実際は2.6%(20~22年度の3年間の年間平均)と半分程度。
現状で推移すれば、将来的には信号機の51%を撤去せざるを得ないと試算している。
倒壊や灯器落下も
すでに、老朽化で心臓部である「制御機」が故障し、信号が切り替わらなくなる例が散見されるほか、腐食で柱が倒壊したり、「灯器」が落下したりする事故も起きている。
信号機のうち、灯器と制御機は都道府県の予算と国からの補助金、柱は都道府県の予算で賄われている。
平成に入ってからの交通安全施設(信号機、横断歩道、規制標識など)の事業費は、5~10年度に1400億円前後(都道府県予算と国の補助金の合計)が充てられていたが、23年度は約665億円と半分以下の水準に落ち込んでいる。
廃校周辺など想定
このため警察庁では、10月に全国の警察本部に対して更新の予算獲得に全力を挙げる一方、必要性の低くなった信号機の撤去も検討するよう指示した。具体的には廃校となった小学校や中学校の周辺交差点などを想定しているという。
警察庁では、「人口が頭打ちとなっていることなどから、これまでのように信号機を大量に新設する必要はない」と指摘。その上で「交通量にも配慮しながら必要性の低くなった信号機は撤去するとともに、新たに必要性の生じた交差点には新設するなど、メリハリのある施策が必要だ」と話している。
しかし、いったん設置した信号機の撤去には、地元住民からの反発も予想される。今後、地元自治会やPTAなどの理解を得る努力も求められそうだ。
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