【書評】『ボクは猫よ』曽野綾子著

AAI Fundさん
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■少しも古びぬ30年前の連載

 ひと言で言えば、曽野さん版『吾輩は猫である』だ。

 三浦朱門、曽野綾子ご夫妻に飼われている「ボク」という名の猫が主人公。

 〈「ボクは猫である。名前はもうある。ネコというのが、その名前である」

 うちのおばさんは、そこまで重々しく原稿用紙に書いてから、牛乳壜(びん)の底をぶち割ってはめこんだような度の強い近眼鏡の奥から、じっと感じの悪い目つきでボクを睨(にら)んだ〉

 猫好きの人間、曽野綾子さんの読者なら、第一章「命名の由来」冒頭のこの一文で一気に引き込まれる。

 小説の中では曽野さんは「阿野文子(あの・ぶんこ)」であり、三浦さんは「裏見成平(うらみ・なるへい)」となっているが、ほとんど三浦、曽野ご夫妻の等身大と言ってよかろう。

 この「ネコ」、なかなか観察眼が鋭く、日常生活でおふたりが交わしている会話などにも聞き耳立てている。

 〈嵐の日のズブ濡(ぬ)れのノラ猫のように、人間もただ荒れ狂う運命に身を任すほかない、という時がある〉

 ところが今の日本では、

 〈一人の人間を不幸にすることは、政治の怠慢であり、「自民党の横暴」であり、(中略)、「企業の儲(もう)けすぎ」なのだから、人間がいわれのない不当な悪運に見舞われるということを、どうしても許せない〉

 実はこの小説、30年前に秋田魁(さきがけ)新報に連載された風刺小説だが、少しも古びていない。それが作品の力というものだ。

 装幀(そうてい)の猫は大野隆司さんの版画。眺めているだけで心なごむことを請け合う。







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