【書評】『いまはむかし~竹取異聞~』安澄加奈著

AAI Fundさん
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大胆・自由な想像力で新風

 
 --いまはむかし、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて、竹を取りつつ、よろづのことにつかひけり--

 こちらはご存じ、古代より口承で語り継がれ成立したとされる、とある壮大なお話の一部分。日本最古の物語といわれ、作者不詳ながらいまなお中学校の教科書に採用されるメジャー作、「竹取物語」の冒頭です。光り輝く竹の中に現れた富をもたらす姫君が、波乱の末に故郷の月へ帰るまでを描いた今でいうSFですが、馴染(なじ)み深いお話のひとつではないでしょうか。

 その古典に着想を得て、大胆かつ自由な想像力により、物語にまったく新しい息を吹き込んだのが本作。現役大学生の安澄加奈さんが初の長編で小説賞の奨励賞を受けた際、審査員の作家、あさのあつこ氏の講評に刺激され、原文で読んで面白さに我を忘れた「竹取物語」を題材に、自分だけにしかできない思い切った作品を書こうと奮起した。

 勇猛な武官の嫡男ながら草食系の弥吹が父から逃れるように出奔した先で出会ったのは、とある命を受けた「月守」と名乗る2人の少年。謎めいた彼らに惹(ひ)かれ行動を共にすることで、弥吹は次第に「かぐや姫」にまつわる壮絶な運命の渦へと巻き込まれていく。

 起伏に富む痛快なストーリーと予想を快く裏切る設定の妙、向こう見ずなまでに理想を追い求める若い登場人物たちの清々(すがすが)しさ。不条理な運命に抗(あらが)いながら、彼らが心の底から追い求め、望んだものとは何だったのか。それらすべてが凝縮し、心揺さぶる最後の1行にも注目ください。







いまはむかし―竹取異聞
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安澄 加奈
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