以前、証券会社では「この株は絶対上がります」といって、株を勧めていました。今こんな証券会社はどこにもありません。それどころか、この業界では「絶対」という言葉は、禁句にさえなっています。本当に、「絶対に儲かる株」はないのでしょうか。
投資をする場合に「絶対の真理」があれば、これに従った行動を取れば儲けられ、反すれば損になります。夢のような法則ですが、何とか見つけられないでしょうか。
昔からある株のことわざや格言の中にありそうです。でも、投資に当たってのすばらしい心得はたくさんありますが、求めている絶対の真理は見当たりません。それどころか、「明日の相場は分からない。株に絶対はない」という格言も目に付きます。絶対の真理は無理のようです。
チャートの世界はどうでしょうか。最近はチャートで株価の天底を予測する方法があるような宣伝も聞こえてきます。チャートで明日の株価が分かれば、絶対の真理に一歩近づけるかもしれません。
始値、高値、安値、終値が、一つの図形になっている「ろうそく足」は、日本人の発明として世界に誇れるチャートだそうです。ろうそく足を使った株価予測は、窓埋めの理論を始め、もったいぶった名前のついた秘法など数多く存在します。
ただ、秘法が一般に知れわたると、方法とは反対の売買をして儲ける人もでてきます。秘法を信じた人が大損をすることにもなりかねません。チャート分析では、起こった事象についての説明はできても、将来の動きを予測するのは無理なような気がします。また、株価と連動性の高い為替、債権の動きから明日の株価を予想している向きもありますが、これも明日の為替・債券市場がどうなるか分からないと株価の動きは予測できません。
ファンダメンタル理論からも同じような事象が見て取れます。チャートもファンダもカードの裏表を当てるよりは、確度が高い方向性は示してくれるかもしれませんが、絶対とまではいえません。でも、
あれやこれやの末、やっと見つけた「絶対の真理」は・・・
(第1公理) 株は上がれば下がる、下がれば上がる
表現の問題として、「永遠に上がり続ける株はないし、下がり続ける株もない」でもいいし、「株の天底は分からない」でも同じことです。要するに株は上下しますが、いつ、どのような状況になれば反転するかは分かりません。分からないのが絶対的真理なのかもしれません。
(第2公理) 株価は需給で決まる
買いたい人と売りたい人が出会ったところで株価が決まります。売りたい人が多ければ株価が下がるし、反対に買いたい人が多ければ株価が上がります。ケインズが言った有名な言葉「株は美人投票」、つまり一位になりそうな人に投票する行動のことで、投票が多い人が美人に選ばれ高い値段になります。
株価は需給で決まるため、信用取引あるいは先物取引の仮儒の残高は、将来の需給に大きく影響して、期日にとんでもない値段がつく可能性もあります。また、TOBや株式分割、あるいは企業業績に関する情報は、需給に直結していますから、事前に知っていれば間違いなく儲かります。だからこそ株式の公平を保つために、厳しいインサイダー情報の管理が義務付けられるようになりました。
(第3公理) 自分の儲けは他人の損から生じる
株はギャンブルでゼロサムゲームのことをいっているのですが、これについては異論も多いことと思います。短期的な売買については、これでいいとしても、長期保有の場合の儲け、たとえば配当金、株の売却益、値上がり期待、経済の発展や企業成長からくる企業価値の向上などの含み益、企業経営に参加できる権利・・・は、誰も損をしていないようにみえます。
私も、長期投資の根拠としてこれらのメリットをあげていますので、反論はしにくいのですが、金銭の移動には対価が伴います。この対価を損と置き換えると、儲けとして受け取る金銭は、相手方が受け取る対価つまり損になると考えれば辻褄は合うような気がします。
さて、苦労して見つけた公理ですが、当たり前のことばかりで投資に役立つとも思えません。発見者の名前が後世に残るわけでもないし、文化功労者に選ばれることもないようです。やはり株に絶対はないとしておいたほうがいいのかもしれません。