神功皇后の新羅征伐の真実
各地に分散する小権力が競い合い、その過程で緩やかな政治的連合体が生まれる。やがて連合体は凝集力の強い支配的権力者の手に掌握されて国家の原型が形づくられる。古代国家とは、いずれの国にあってもそうして生成したものにちがいない。そして国家というこの政治的有機体は、国内統一を完成させるや、内に向けていたそのエネルギーを今度は周辺諸国に向けて放射しようとするのであろう。
西暦250年頃に登場した大和朝廷は成立後100年と少しの間をおいて、早くも朝鮮半島への進出を企図した。著者は、倭国の新羅侵入について記した史料を細密に読み込み、神功(じんぐう)皇后の新羅征伐がまぎれもない歴史の真実であったことを突き止める。神功皇后は、日本や韓国の古代史学会ではその存在さえ否定されてきた妃である。皇后の新羅征伐の事績をたどった本書の意義はきわだって大きいといわねばならない。本書によれば西暦200年以降の300年間に倭国の新羅侵攻は27回に及んだという。
そうであれば、倭国が朝鮮半島に橋頭堡(きょうとうほ)としての居留地をすでに古代において構築していたと考えて少しも不自然ではない。本書は、神功皇后の新羅征伐に先立つ魏(ぎ)王朝(220~265年)以前の時代から、倭国が半島南部の沿海地域、洛東江流域の任那、加羅の地に支配の手を伸ばしていた事実を証している。あまたの歴史文献に分け入り、繁(しげ)く歩いて踏査した石碑の地理的位置や碑文解読を通じて歴史を組み立てていく姿勢が凛々(りり)しい。
本書は著者による「日本古代史 正解」の3作目である。ビジネス界での功を経て老境に入らんとする著者をして、日本の古代史にこれほどまでの情熱を注ぎ込ませているものは何か。
「記紀」(『古事記』『日本書紀』)という権威ある国史をもちながら、それをあたかも天皇家による統治を正当化するために「造作」されたものであるかのごとくに貶(おとし)めてきた日本の古代史学への怒りである。日本人として生きて今ここに在ることの証しを立てねば止(や)まじとする著者の筆に力が漲(みなぎ)る。
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大平 裕
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