選び方を含め政治が身近に
やっぱり出たか。真っ先にそうおもった。本の帯に「とうとう、辞めた。」とあるからなおさらである。前首相、菅直人の虚言を弄(ろう)した辞任劇は、嫌悪に近い後味の悪さと不信感を私たちに与えた。
著者があとがきに引用した経営者の言葉に「トップの評価は退(ひ)き際で決まる」とある。まさにそうである。菅が厚生大臣だったとき、薬害エイズの被害者に謝罪して喝采を浴びた。菅の自慢はそれだけだったが、それも帳消しになり、メディアからうまく逃れたはずの女性スキャンダルだけが残った。
本著には、20人の首相が登場する。細川護煕(もりひろ)、安倍晋三、鳩山由紀夫に始まって田中角栄、福田赳夫、中曽根康弘、小泉純一郎、三木武夫、宮沢喜一、麻生太郎、そして菅直人。あとの面々は、なぜ首相に選ばれたのか、疑問におもうほど印象が薄い。
好例が竹下登である。調整型の竹下は、長期政権が予想されたが、リクルート事件が表面化して辞任した。竹下本人は関与していなかったが、首相の責任を追及されて辞めざるを得なかったのだ。
ところが事態は収まらなかった。5人の派閥の領袖(りょうしゅう)のうち4人が汚染され、次期総理を狙う若手候補までもが失脚または逼塞(ひっそく)となる。
これぞと思う清廉潔白な人物には辞退され、消去法で選ばれたのが外相の宇野宗佑だった。これが就任1週間にして女性スキャンダルが噴出してダウン。たまたま迎えた参院選に自民党は歴史的大敗を喫して迷走スパイラルに突入するのである。
本著は、政界ウオッチャーである著者自身が数ある政変劇をきちんと取材をして立体的に絵解きをしてくれて分かりやすいのが特徴だ。
強運にも今回の大震災で死に体から甦(よみがえ)った菅は、あたかも“ひとり遊び”をしているかのように民・自大連立を持ちかけたり、延命工作を仕掛けたりと、職務を顧みない行動に明け暮れた。政策なしの「空き菅」と揶揄(やゆ)される首班を戴(いただ)いた私たちこそ迷惑千万であった。首相の選び方を含めて、政治を身近に考えさせる快著である。
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